不動産投資家であれば知っておきたい、資産管理会社の仕組みと設立方法

不動産投資家であれば知っておきたい、資産管理会社の仕組みと設立方法

資産管理会社とは、資産家や投資家の資産を管理・運用することを目的に設立される会社法人を指します。大金持ちにしか関係のない話と思われがちですが、不動産を所有している人やこれから不動産投資を始める人にとって全く無関係とは言えないかもしれません。

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資産管理会社とは

資産管理会社とは、資本家や投資家の資産を管理・運用することを目的に設立される会社法人のことを言います。会社の組成形式は、株式会社や合同会社などどのような形を取ることも可能で、税制や契約関係についても通常の法人と基本的には同じものです。資産管理会社の設立は、節税対策や相続対策のためにしばしば用いられます。これらは、資産家が行うものと思われがちですが、サラリーマンなどでも資産管理会社の設立による効果は少なくありません。

資産管理会社には、3つの運営形態が考えられます。今回は不動産の資産管理を例にとって説明します。

  • 直接保有型
    資産家や投資家の持っている不動産を資産管理会社の所有にして、管理・運用する形態です。資産家や投資家は、家族などを役員にして、賃料などの収入を役員報酬として家族に支払うことで所得分散を図ることになります。
  • 委託型
    資産家や投資家の持っている不動産を所有者はそのままで、資産管理会社に管理・運用を委託するという形態です。取り組みやすい方法ですが、賃料の5%程度の管理費が資産管理会社に入るだけで、残りは資産家や投資家の所得になるので所得分散の効果が小さくなってしまいます。
  • 転貸型
    資産家や投資家の持っている不動産を資産管理会社が借り上げて管理・運用する形態です。資産管理会社に賃料の20%程度の転貸差益が入り、資産家や投資家は80%程度の不動産所得になるので、大きな所得分散が可能になります。

以上から、所得分散による節税効果は、運営形態によって変わってくることが分かります。また、いずれの方法をとっても、資産管理するためにかかる費用を資産管理会社が必要経費として計上することもでき、節税効果が望めます。

資産管理会社を活用した節税方法

資産管理会社を利用した節税方法は主に4つあります。

所得税と法人税の税率の違いを利用し、所得分散して節税する方法

所得税と法人税では税率が異なります。所得税が5%から45%までの累進課税となっている一方で、法人税は中小法人の場合、所得金額が年800万円以下の部分は19%、800万円を超える部分は23.2%、また地方法人税が法人税額の4.4%となっています。したがって、不動産所得の金額によっては、所得税と法人税を使い分けて節税することができます。以下で、どの程度節税できるのかシミュレーションしていきます。ここでは、税額を所得税と法人税のみとして単純化しています。

例)本業において課税される所得600万円、不動産所得600万円のサラリーマンの場合

  • 資産管理会社を活用しないとき
    所得の合計は1,200万円、控除額は6万円、所得税率は33%なので、
    1200×0.33-153.6=約242万円が税額となります。
  • 資産管理会社を活用するとき(直接保有型)
    このとき、不動産所得を資産管理会社の収入として所得分散します。
    所得税に関する所得の合計が600万円、控除額は75万円、所得税率は20%なので、 600×0.2-42.75=約77万円が所得税額となります。
    次に、法人税額は、600×0.19=114万円 となり、地方法人税額が、114×0.044=約5万円となるので、合わせると、約119万円となります。
    最後に、所得税額と法人税額を合計すると、約196万円が税額になります。

以上で、単純に税額を比べると約46万円節税することができている計算になります。
しかし、注意しなくてはいけないのが、「資産管理会社を活用するとき」において、600万円の不動産所得分は資産管理会社にあり、家計には入っていない点です。

  • 資産管理会社を活用するとき(直接保有型、不動産所得を家計に入れる場合)
    ここで、不動産所得分の600万円分を家計に入れるには、家族を役員にするという方法が有効です。不動産所得から法人税を引いた額は約480万円です。4人家族であった場合、残りの3人に160万円ずつ役員報酬として渡すと全てを家計に回すことが出来ます。
    給与160万円の場合は給与控除40%と所得税5%で計算します。しかし給与控除は下限額が65万円と定められているため、65万円を控除として適用します。このときの税額は、一人あたり(160-65)×0.05=4.75万円 となり、3人なので合計は14万円強となります。この方法をとったときに合計でかかる税額は、前述した約196万円と合わせると約210万円となります。

まとめると、資産管理会社を活用することによって、このケースでは約32万円節税することができると分かります。

贈与税を節約する方法

贈与税を節税する際にも、資産管理会社を利用することができます。方法としては、資産家や投資家が自ら資産管理会社の代表となり、贈与したい相手を役員として迎え入れ、役員報酬として現金を贈与するというものです。贈与する金額によって、贈与税より所得税の方が節税出来る場合があり、そのようなときに利用することで節税効果が望めます。どの程度節税できるのかシミュレーションして考えていきます。

例)子供に年間300万円贈与する場合

  • 資産管理会社を活用しないとき
    贈与税の基礎控除額は110万円、税率は300万円のとき15%で、控除額が10万円です。そのため、(300-110)×0.15-10=18.5万円 が贈与税として課税されることになります。
  • 資産管理会社を活用するとき
    子供を役員にして、役員報酬として300万円を贈与する場合を考えます。給与控除が、給与の30%に加え18万円となっており、所得税率は10%、控除額は75万円です。そのため、{300-(300×0.3+18)}×0.1-9.75=9.45 万円が所得税として課税されることになります。

以上からこのケースの場合は、資産管理会社を活用することによって、約9万円節税することができると分かります。

損益通算を利用する方法

損益通算とは、複数の事業を行っている個人が、主たる収入を得ている事業間の損失と利益を合算して所得とする制度です。例えば、年収600万円のサラリーマンが不動産事業では100万円の赤字を出した場合、これらを通算して500万円が所得となります。

個人の所得の場合は一部の事業間でのみ認められる損益通算ですが、法人ではすべての収益と損失を一つの事業の収益と損失と見なすことができます。たとえば個人であれば、先ほどの例にさらに株式投資で200万円の赤字を計上していた場合、その損失を損益通算することはできません。しかし法人であれば、制度上は損益通算という言葉は用いられませんが、これを事業収益に含めることができます。

たとえば不動産投資から500万円の収益、株式投資から200万円の損失が生じた場合、個人では損益通算を行うことができません。個人では不動産所得の500万円分にかかる税金を払いますが、法人は通算して求められた300万円分にかかる法人税を払うだけで済みます。このように不動産事業と赤字事業を同時に抱える場合には、資産管理会社を作ることで節税効果が望めます。

必要経費として費用を算入する方法

資産管理会社を設立することによって、不動産にかかる様々な費用を必要経費として算入し、税額の軽減を見込むことができます。しかし、具体的にどのような出費を経費として計上できるのかについては事業の状況にもよるため、詳述は避けさせていただきます。

どのような人が資産管理会社を設立したら良いか

節税という観点で見た場合には、以下のような人は資産管理会社を設立すると良いでしょう。

  • 不動産投資以外にある程度の収入があり、不動産所得分を節税したい人
  • 無職の家族が多い人
  • 現金贈与を行い、相続税対策をしたい人
  • 不動産事業と赤字事業を先代から引き継いだ人
  • 不動産事業の傍ら、FXなどのリスクの高い取引も行っている人

一方で、資産管理会社を設立する際の注意点も存在します。以下の点に気をつけましょう。

  • 赤字だとしても法人住民税の均等割(金額は地域による)を毎年支払わなくてはいけない
  • 資産管理会社を設立する際には、6~24万円程度の費用がかかる
  • 法人税を納付しなくてはいけないため、決算書類の作成など経理の負担が増える
  • 資産管理会社が役員報酬を支払うときに社会保険料を半分払わなくてはいけない

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資産管理会社の設立方法

まず、資産管理会社の種類を決める必要があります。種類とは、株式会社や合同会社といったものです。一般的に株式会社が有名ですが、合同会社は以下のポイントから個人的に資産管理会社を設立する際には適している種類であるとされています。

  • 設立コストが低い
  • 決算公告が不要である
  • 出資比率に関わらず利益配分を定款で自由に決めることができる

合同会社の弱みに社会的信用が低いことが挙げられますが、対外取引をあまりしない場合や会社として融資を受けようとしていない場合にはあまり関係ありません。

1.社名等必要事項を定める

会社設立の際には、まず以下の項目を定めます。

  • 社名
    基本は自由ですが、使用できる文字を使っているか、設立前に類似商号がないかを確認する必要があります。
  • 本店
    郵送物の受け取りや、事務所賃料として費用を計上するために必要となります。資産管理会社の場合は、自宅を本店とすることが多いです。
  • 事業年度
    会社の事業年度は自由に定めることができます。事業年度は、個人の確定申告が3月であるので、それとずらすために、事業年度を1月から12月にするのを避けるというのは1つの方法です。
  • 資本金
    資本金は1円から可能となっています。ただし、役員報酬を利用した税額調整の際に、資本金が少ないと資金が底をつくという危惧から金額設定で慎重になりがちです。そうした調整幅として30万円以上にする方法も知られていますが、対外取引がほとんどないので、1円でも問題はありません。
  • 社員構成
    役員報酬を払うつもりである家族は役員として登記する必要があります。また、所得分散の為に給与を払いたいが、資産管理会社の意思決定には関与して欲しくない場合には、役員でなく従業員で登録するようにすると良いでしょう。

2.必要なものをそろえる

次に、会社設立に必要なものをそろえます。以下のものが必要となります。

  • 代表者印・角印・銀行印
    代表者印は契約書や手形に使われ、角印は請求書に使われ、銀行印は銀行口座に登録するために使われます。
  • 定款
    定款とは会社の基本的なルールを定めたものです。定款の中には事業目的として、不動産運営を行っているという旨を記載しておく必要があります。
  • 就任承諾書類
    役員に就任する者たちから承諾書類をもらう必要があります。記載する内容としては、名前、日付、住所、承諾する旨の文言があれば構いません。
  • 資本金
    先ほど決めた資本金の金額を集めましょう。
  • 会社設立費用
    株式会社の場合は、20~24万円程度、合同会社の場合は6~10万円程度が必要となります。両者ともに4万円の振り幅がありますが、これは電子定款にすることで費用を4万円節約できるというものです。

3.届出をする

最後に以下のものを提出すれば設立が完了します。

  • 法人設立届出
    税務署に会社設立の事実を知らせるための書類です。国税庁のサイトからダウンロードすることができます。
  • 事業開始の届出
    本店を管轄している都道府県や市区町村に対して会社設立の事実を知らせるための書類です。各自治体のサイトからダウンロードすることができます。

資産管理会社を活用した不動産投資

資産管理会社を設立することができたら、不動産を資産管理会社に移転する手続きなどが必要となります。以下の手順で手続きを行いましょう。

  1. 資産管理会社が資産家や投資家の所有する不動産を時価評価で購入します。
    土地の売却益が高いときなど、多額の課税を回避するために建物だけを売買し、土地に関しては賃借関係を結ぶことがあります。このとき、「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出することによって、借地権等に関する課税がなくなります。
  2. 資産管理会社は、資産家や投資家に購入代金を支払います。
  3. 資産管理会社は、不動産からの収益を基に購入代金や役員報酬を払います。
  4. 委託型や転貸型でなく、直接保有型で不動産を管理する場合は、不動産の名義変更が必要になります。このとき、登録免許税などの費用がかかります。

まとめ

今回は、資産管理会社の概要や資産管理会社を活用した節税方法などについて説明してきました。節税に関しては、所得金額によっては節税の効果が薄い場合もあるので、ご自身でシミュレーションしてみる必要があります。シミュレーションによって効果が大きいと分かった場合は、資産管理会社を設立することも検討してみてください。

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