【 目次 】
国土交通省が2022年3月22日に公示地価を発表しました。2021年の公示地価は新型コロナウイルスの影響で、全国全用途6年ぶりに下落しましたが、果たして2022年は? 公示地価の見方とあわせ、東京23区の変動率にもフォーカスして解説していきます。
公示地価とは?
まずは公示地価について初心者の方でもわかるように詳しく解説します。
また「不動産に関係する公示地価以外の4つの指標」や「不動産価格の鑑定評価方式」についても併せてチェックしておきましょう。
地価公示と公示地価について
■地価公示とは 「適正な土地取引をするために国土交通省土地鑑定委員会が毎年1/1時点における標準地の正常な価格を3月(中旬〜下旬)に公示する」こと |
■公示地価とは 「地価公示で公表される土地の価格」のこと |
査定をする際は1つの地点において不動産鑑定士2名以上の鑑定評価をもとに、土地鑑定委員会が「標準地1㎡あたりの土地価格」を決定します。
ちなみに標準地というのは「地形が悪い、もしくは規模が大きい等の特殊な土地ではなく、あくまでも「土地の利用状況、環境等が標準的な土地」のことです。
また、標準地の鑑定は建物が立っていたとしても、「更地であると仮定して評価される」のが地価公示の大きな特徴です。
毎年ほとんど同じ場所で標準地を鑑定するため、「地価変動を把握しやすい」のがメリットです。
その一方で、ある特定地のみを標準地として採用しているため、「国内全ての地域を網羅していない」というデメリットもあります。
2021年(令和3年)では約26,000箇所で鑑定をしており、公示地価は土地売買における重要な指標として利用されています。ただし、一般的な土地売買は売主と買主の双方が納得した価格で契約が成立するため、必ずしも公示地価と等しくならない場合がある点に注意しましょう。
不動産に関係する公示地価以外の4つの指標
不動産に関する指標は公示地価だけではありません。
いずれも不動産の税金や売買に関係する重要な指標であるため、「公示地価」と比較しながら一緒に覚えておきましょう。
- 基準地価
- 相続税路線価
- 固定資産税評価額
- 実勢価格
公示地価 | 基準地価 | 相続税路線価 | 固定資産税評価額 | 実勢価格 | |
調査機関 | 国土交通省 | 都道府県 | 国税庁 | 市区町村 | ― |
主な利用用途 | ・一般の土地売買の指標 ・公共事業用地取得の規準 |
・一般の土地売買の指標 ・公共事業用地取得の規準 |
相続税、贈与税の算出の基準 | 固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税を計算する基準 | 不動産の売主と買主の双方が納得して、需要と供給が釣り合った価格 |
基準日 | 1/1 (毎年) |
7/1 (毎年) |
1/1 (毎年) |
1/1 (3年ごとに評価替え) |
― |
発表時期 | 3月下旬 | 9月下旬 | 7月上旬 | 3月下旬 | ― |
■基準地価
公示地価と同じように土地売買の重要な指標として「基準地価」があります。
基準地価とは「各都道府県が1名以上の不動産鑑定士による土地の鑑定評価を求め、毎年7/1時点の土地価格を9月下旬頃に公表する地価」のことです。
基準地価は公示地価と同じく、国土交通省の「標準地・基準地検索システム」によって調べることができます。
評価水準としては「公示価格と同程度」が目安です。
■相続税路線価
相続税路線価とは「道路に面している標準的な宅地の1㎡あたりの評価額」のことです。
相続税路線価は不動産鑑定士による鑑定評価をもとに国税庁が定めており、同庁が毎年1/1時点の相続税路線価を7月上旬頃に公表します。相続税路線価は主に「相続税や贈与税の計算」に利用されます。
相続税路線価は国税庁のHP「路線価図・評価倍率表」にて調べることが可能です。
評価水準としては「公示地価の約80%程度」が目安となっています。
■固定資産税評価額
固定資産税評価額とは「固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税を計算する際の基準となる評価額」のことです。
固定資産税評価額は、一般的に不動産鑑定士による標準宅地の鑑定評価を基準とし、各市区町村の固定資産評価員が所用の補正を行って査定しており、市区町村長が毎年3/31までに固定資産税課税台帳に登録します。
固定資産税評価額は3年ごとに評価替えがされ、不動産の所有者に毎年送られてくる「課税明細書」を見れば確認することが可能です。もしくは各市区町村の役場に設置されている「固定資産課税台帳」でチェックすることもできます。
評価水準としては「公示地価の約70%程度」が目安です。
■実勢価格
実勢価格とは「不動産の売買契約が成立する価格」のことです。
つまり不動産の売主と買主の双方が納得して需要と供給が釣り合った価格であるため、「不動産取引ごとに常に変化する価格」となります。
評価水準としては場合によっては公示地価と大きく乖離してしまうケースもあります。
2022年の公示地価
それでは、2022年最新版の公示地価の対前年平均変動率について、エリア別・用途別に見ていきましょう。
下の表は2022年3月に国土交通省が発表した「令和4年地価公示」から作成したものです。
公示地価の変動率
住宅地 | 商業地 | |||||
2020年 | 2021年 | 2022年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
全国 | 0.8 | -0.4 | 0.5 | 3.1 | -0.8 | 0.4 |
東京23区 | 4.6 | -0.5 | 1.5 | 8.5 | -2.1 | 0.7 |
都心部※1 | 1.1 | -0.6 | 0.5 | 5.4 | -1.3 | 0.7 |
地方※2 | 0.5 | -0.3 | 0.5 | 1.5 | -0.5 | 0.2 |
※1三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)
※2三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)をのぞく地域
参考)
国土交通省 令和4年地価公示
圏域別・用途別対前年平均変動率
東京圏の地域別対前年平均変動率
2021年は新型コロナウイルス感染症の影響により、全国的に公示地価は下落傾向にありました。その影響は地方より都心、また住宅地より商業地で顕著に見られました。
商業地の公示価格の下落は、新型コロナウイルス感染症の影響により、店舗の賃貸需要やホテル需要が減退したことが原因だと考えられています。
しかし、新型コロナウイルスの影響が緩和される中で、公示地価はいずれのエリア、土地用途についても回復傾向を見せています。
特に東京23区の公示地価上昇率は高く、地方と比較して住宅地で3倍、商業地で3.5倍となっています。
新型コロナウイルスの影響によるライフスタイルの変化やテレワークの推進により、郊外への人口移動が増えるとも予想されていました。しかし、住宅地・商業地ともに利便性の高い都心エリアのニーズはいまだ堅調であり、今後の公示地価も安定した推移を見せると予想されます。
公示地価が上昇しているエリアはどこ?
上記でご紹介した通り、令和4年における公示地価は全国的に上昇の傾向を見せています。それでは、特に上昇が著しいエリアにはどのような特徴があるのでしょうか。
地価上昇率が高いエリアの特徴
「令和4年地価公示」から、特に地価の上昇が継続していると認められるエリアと、その上昇理由をいくつか抜粋してご紹介します。
【1】北海道北広島市
北海道北広島市の地価上昇率は住宅地で26.0%、商業地で19.6%と高く、いずれも全国1位となっています。
この背景には、再開発事業に伴う駅周辺の繁華性の向上、利便性があり広い居住地が確保できる当エリアへのニーズ拡大があると考えられています。
【2】福岡県大野城市
大野城市の住宅地における地価上昇率は11.1%と、全国でも有数の高さを誇ります。人口が集中する福岡市(博多駅)まで直通20分と好アクセスで、相対的に割安感があることから住宅地としての需要が高まっていることが背景にあります。
【3】栃木県宇都宮市
栃木県宇都宮市の住宅地における地価上昇率は5.8%、商業地は2.4%といずれも高水準です。LRT(次世代路面電車システム)が整備中で、新駅設置が予定されていることから、利便性向上が期待され、地価が上昇していると考えられています。
また、JR宇都宮駅東口周辺では、公共施設や民間施設の整備が進められており、オフィス、店舗、マンション用地いずれも堅調な需要があることも、地価の上昇に影響を与えています。
地価上昇率が著しい地方のエリアにおける共通点としては、「再開発が進んでいる」、「都市へのアクセスが良好」の2点が挙げられます。この結論は都心での不動産投資にも応用できます。
「将来性」と「利便性」は地価上昇が期待できるエリアを見極めるうえで重要な要素である、ということを押さえておきましょう。
東京23区における地価上昇率ランキング
それでは、東京23区において地価上昇率が高いエリアはどこなのでしょうか。
住宅地、商業地それぞれの地価上昇率トップ5の区を表にしてみましょう。
住宅地 | 商業地 | |||
区名 | 上昇率(%) | 区名 | 上昇率(%) | |
1位 | 中央区 | 2.9 | 中野区 | 2.3 |
2位 | 豊島区 | 2.6 | 杉並区 | 2.1 |
3位 | 文京区 | 2.5 | 荒川区 | 2.0 |
4位 | 港区 | 2.4 | 文京区 | 1.8 |
5位 | 千代田区 江東区 中野区 |
2.1 | 北区 | 1.7 |
住宅地に関しては都心と言われる中央区や港区、千代田区の地価上昇率が高く、住宅地としての需要が十分に見込めることが見て取れます。
また、商業地に関しては都心からやや離れたエリアが多くランクインしていることが分かります。
このように、同じエリアでも土地の用途によって需要の動向や地価の変動率は異なります。このことを踏まえて、投資先のエリアや不動産の種類を選ぶことが重要です。
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気になるエリアの公示地価を調べる方法
公表された公示地価は国土交通省の「標準地・基準地検索システム」を利用することで調べることが可能です。
具体的な公示地価の検索フローを以下の4つのステップに分けて解説します。
- 国土交通省の「標準地・基準地検索システム」にアクセスする
- 公示地価を調べたい都道府県・市区町村をチェック
- 検索条件を入力
- 調査したいエリアの公示地価を確認する
STEP1|国土交通省の「標準地・基準地検索システム」にアクセスする
まずは以下の「国土交通省|標準地・基準地検索システム」へアクセスしましょう。
国土交通省|標準地・基準地検索システム
STEP2|公示地価を調べたい都道府県をチェック
次に公示地価を調べたい場所の都道府県と市町村をクリック。
STEP3|検索条件を入力
次に以下の検索条件にチェックを入れていきます。
【1】対象
以下の3つより選択します。
・地価公示のみ
・都道府県地価調査のみ
・地価公示・都道府県地価調査の両方
【2】調査年
過去の鑑定結果を遡ってチェックしたい場合は「調査年」を選択します。
最新の公示地価情報のみ確認したい場合は「最新調査年のみ」をチェックしましょう。
【3】用途区分
例えば、一般的に高い容積率の高層マンション用地なら「商業地」、戸建住宅地購入なら「住宅地」にチェックを入れましょう。
【4】地価
明確に「1㎡あたり〇〇円」という基準があるなら設定しておきましょう。
必要な検索情報にチェックを入れたら「検索」をクリックしてください。
STEP4|調査したいエリアの公示地価を確認する
検索結果の「価格(円/㎡)」の部分に表示されている数値が公示地価です。
ただし、同じ市町村内で検索条件を満たす全ての公示地価が表示されてしまうため、調査したいエリアに最も近い情報を自分で探す必要があるため注意しましょう。
公示地価を把握するメリット
公示地価は土地の売買をする際の重要な指標の1つであり、把握しておくことで様々なメリットがあります。
今回は「不動産購入を検討中の人」と「不動産を所有している人」のパターンに分けて公示地価を把握するメリットをご紹介します。
また「公示地価の効力」についても把握しておきましょう。
不動産購入を検討中の人
不動産購入を検討中の人の場合、公示地価を把握するメリットは以下の2点です。
■購入しようとしているエリア(土地)の価値の目安を把握できる
公示地価は毎年ほとんど同じ場所にて評価されるため、データを遡って調べることによって土地相場が上昇しているか、下降しているかを把握することができます。
公示地価が上昇トレンドであるか、あるいは地価が底を打った状態にあり、かつ金利が安いタイミングであれば「不動産の買い時」と判断できるでしょう。
■金融機関の担保評価目安が把握できる
金融機関は不動産の融資をする際は、主に「属性(職業、勤め先、年収、貯蓄額など)」と「物件の積算価格」を基準に査定します(物件によっては収益価格も重視する場合もあります)。
積算価格とは「土地の評価額+建物の評価額」のことであり、
土地の評価額は「相続税路線価÷80%×土地面積(㎡)」で計算することが可能です。
公示地価が3月下旬に公表されるのに対して相続税路線価は7月上旬に公表されます。
路線価は「公示価格の約80%」が評価水準とされているため、公示価格が分かれば相続税路線価を簡易的に計算することが出来ます。
不動産を所有している人
すでに不動産を所有している人にとって、公示地価を把握するメリットは以下の2点です。
■自分の保有する土地の価値目安を把握できる
公示地価は毎年ほぼ同じ場所にて評価されるため、情報を遡ってチェックすることで自分の所有している土地相場が上昇しているのか下降しているのか把握できるのは大きなメリットと言えます。
■売却価格の目安にできる
また公示地価は土地の売買において重要な指標の1つであり、主に取引の盛んな都心部では「実勢価格>公示価格」となるケースが多いため、価格交渉のデータとして利用することが可能です。
公示地価の効力について
公示地価は一般的な土地の売買において重要な指標となりますが、「参考にするケース」と「規準とするケース」があります。
以下の2つのケースを比較して違いをよく把握しておきましょう。
■「一般的な土地の売買」の場合
「一般的な土地の売買」の場合は公示地価を参考にして売買価格を決定する場合があります。
一般的な土地の売買は売主と買主の双方が納得した金額で契約が成立するため、公示地価は参考程度でも構いません。
例えば地形が悪い、間口が狭い、最寄りの駅から遠いなど様々な要因によって「公示地価」と「実勢価格」は同じになるとは限らないということをよく理解しておきましょう。
■「不動産鑑定士による鑑定評価」「土地収用法による取引」の場合
以下の2つのケースでは公示地価を規準として土地の価格を決定する必要があります。
【CASE1】
不動産鑑定士が公示区域内の土地について鑑定評価をする場合であり、対象となる土地の正常な価格を求めるケース。
【CASE2】
土地収用法などによって土地を収用できる事業をする者が公示区域内の土地を取得する場合であり、対象となる土地の価格を決定するケース。
まとめ
毎年発表される地価公示はインターネットを通じて誰でも知ることが出来るので、不動産を所有する予定の人や保有している人は毎年チェックされてみてはいかがでしょうか。
また都心部においては今後も安定した水準で推移すると予測され、ますます不動産投資への安心感が高まるのではないでしょうか。
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■監修者プロフィール
中田 敏之
不動産鑑定士/宅地建物取引士
三菱電機情報ネットワーク株式会社(現 三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社)にてエンジニアとして勤務後、一般財団法人日本不動産研究所にて不動産鑑定・研究を経て、千葉市で開業。大型収益ビルから山林まで、幅広い不動産に関して相談可能です。会社ホームページ:株式会社 中田不動産鑑定
不動産投資の基礎、リスクヘッジまで解説します ▶不動産投資の仕組みについて「セミナー」で学びたい |
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