【 目次 】
不動産投資をするにあたり、積算価格と収益価格という言葉を耳にする機会があるかと思います。
そこで、今回は積算価格と収益価格の違いから、それらの使い方までを解説していきます。ここで一度、じっくり理解を深めてみてはいかがでしょうか。
積算価格と収益価格
大まかに二つを区別すると、積算価格は建物自体の価値を表した価格、収益価格は建物の生み出す価値を表した価格です。
以下では、その特徴と違いについて説明していきます。
積算価格と収益価格の特徴の違いと用途の違いは?
積算価格は、「現在と同じ土地を購入し、同じ建物を建てた場合、どのくらいかかるのか(再調達原価)」を表す価格であるため、金融機関がお金を貸す際、担保として預かる物件の価値を見極める価格になっています。
築年数や面積、構造などを判断の材料として、客観的に査定することができます。
一方収益価格は、「現在建物から得られる家賃収入等から計算した場合、どのくらい儲かるのか」を表す価格になっています。
そこで、この収益価格は賃貸用建物やテナントビルなどを購入する際に多く用いられます。
つまり積算価格は費用面に着目し自分で利用するため、収益価格は収益面に着目し不動産投資をするために使われるということです。
土地と建物の積算価格の計算方法
積算価格と収益価格について違いが分かったところで、積算価格を算出する方法を見ていきます。
ここでは、土地と建物それぞれの積算価格を出してみましょう。
土地の積算価格の求め方
土地の積算価格は、国税庁の「相続税評価額路線価(路線価)」、市町村の「固定資産税路線価」、国土交通省の「公示価格」、都道府県の「基準地価」などを元にして計算します。
土地の積算価格 = 路線価 × 土地面積(㎡)
で求めます。
※路線価は、「全国地価マップ」を利用すれば簡単に分かります。
ただし、土地の形状によって積算価格が多少変化します。
■角地
・面する道路のうち、一番高い路線価で計算する
・1割増しの評価をする
■二面の道路に面する土地
・二つの道路のうち、より高い路線価で計算する
■旗竿地・不整形地
・旗竿地(袋地から伸びる細い敷地で道路に2m以上接するような土地)や、不整形地(正方形・長方形以外)は約3割引きの評価をする
建物の積算価格の求め方
構造や築年数を用いて計算します。
建物の積算価格 = 再調達価格 × 土地面積 × ( 残存年数 ÷ 法定耐用年数 )
で求めます。
- 再調達価格とは、鉄筋コンクリート20万円/㎡、木造15万円/㎡などといったように、建物の構造によって決められています。
- 残存年数とは、鉄筋コンクリート47年、木造22年などといったように国で決められている法定耐用年数(建物が利用に耐える年数)のうち、その時点で残っている年数のことを指します。
気をつけるべき積算価格
積算価格の計算方法を考えると、「積算価格の高い建物の方が資産価値は高い」と考える方が多いと思いますが、必ずしもそうとは限りません。積算価格は高いけれど資産価値は低い物件の例としては、
- 郊外の広い土地に一つだけ建っている建物
- 地方のRC造建物
- 幹線道路沿いの駅から遠い建物
があります。土地の積算価格は路線価を用いて計算しますが、都心より郊外のほうが、路線価は高い場合も多々あります。
そのため、積算価格はあくまで資産価値の判断材料の一つである、程度に認識しておきましょう。
また、中古物件を買う場合や新築物件を長期に渡って運用する際、RC造は修繕の規模が大きいため修繕費が高くついてしまうという欠点があります。
修繕する場合も、木造のように単純な造りではないため広範囲を直さなければならず、その金額も高くなってしまいます。
さらに、路線価によって左右される積算価格ですが、駅からの距離によって路線価が変動します。
駅に近い物件ほど高いのですが、幹線道路の場合その変動幅が小さくなります。
つまり、「小さな道沿いで駅から近い建物」よりも「幹線道路沿いで駅から遠い建物」のほうが、積算価格が高くなることがあるのです。
ただし、幹線道路沿いの建物は車の交通量が多く敬遠されることもあります。
駅からの距離や立地の良さは物件選びで最も重要なので、この点についても留意しておくと良いでしょう。
収益価格の計算方法
続いては建物が生み出す価値である収益価格について説明します。
収益価格を求める方法は「直接還元法」と「DCF法」の2つありますが、それらがどういった計算で収益価格を求められるのか、また使い分けはどうなっているのかを説明していきます。
直接還元法
直接還元法を用いた場合には、収益価格を
収益価格 = 1年間の純収益 ÷ 還元利回り
で求めます。
- 1年間の純収益とは、【1年間の純利益=1年間の収入-1年間の諸経費】で求めます。収入とは、その建物から生み出される家賃や土地代などを指し、諸経費とは、税金やマンションの管理費などを指します。
- 還元利回りとは、不動産投資をした際に得られる利益と将来的に得られる利益を出すための指標となる数値で、投資する不動産の利益がそのまま反映されることが特徴です。都内の新築マンションであれば、5%が目安となっています。還元利回りの数値を知るには、対象の建物と条件の似た事例を比較して算出する方法と、不動産の関連企業が出しているデータを参考にして決定する方法の二つがあります。
DCF法
DCF法は、将来得られるだろう利益と売却時の予想価格を、それぞれ現在の価値に置き換えて合計する方法です。
「現在の価値」というのは、今すぐもらえる100万円と5年後にもらえる100万円では、同じ金額でも今すぐもらえる100万円のほうが価値はあるという考えから生まれています。
今すぐ100万円をもらえれば、それを運用に当てて増やすことができます。
また、なんらかの原因で5年後に約束した100万円がもらえなくなるかもしれません。
そこで、将来得られるだろう利益に対して、割り引いて考える必要があるのです。
収益価格 = 毎期の純利益の現在価値の合計 + 復帰価格(売却価格)の現在価値
で求めます。
この式だけでは難解ですので、詳しく計算方法を解説していきます。
まず、DCF法は複数のステップに分けて行います。その過程は以下の通りです。
① 将来のフリーキャッシュフローを予測
フリーキャッシュフローとは、自由に使える資金のことで【税引き後の利益+減価償却費+運転資本の増減-現状維持するのに必要な資金】で求めます。過去のデータをもとに、1年毎のキャッシュフローを予想してください。この時、市場、競合、取引価格が変化した場合どの程度の影響を受けるかまで想定できるといいでしょう。
② 保有期間中の純利益を現在価値に直す
①で出した将来のキャッシュフローを割り引いて、現在の価値に直す作業を行います。現在の価値に直す際「割引率」を用いるのですが、この割引率を求める方法は主に以下の通り、三つあります。
・似ている不動産の事例と比較して求める
対象不動産と似ている取引事例をもとに、いくつかの補正を行って求めます。
・負債コスト・自己資本コストを平均して求める。
これらのコストを算出するときに必要なデータについては日本銀行のWebサイトなどを参考にします。
・金融資産の利回りに個別性を加味して求める
投資対象としての危険性や管理の困難さなどを加味して、割引率を出します。
③ 売却価格を予測する
まず、売却価格を【保有期間満了の翌年の純利益÷最終還元利回り】で求めます。そしてその価格に②と同様、割引率をかけて現在価値に直します。
④ ②と③を合計する
②で求めた毎期の純利益の現在価値と、③で求めた売却価格の現在価値を合計して収益価格を出すことになります。
直接還元法とDCF法の違いと使い分け
直接還元法とDCF法の違いを簡単にまとめると、前者は一年間の収益性にのみ着目していますが、後者は将来何年か先の収益性に着目していることが挙げられます。
また、直接還元法とDCF法の計算方法を見ても分かるように、明らかにDCF法の方がたくさんの数値やデータを用いて複雑な計算を要します。
つまり、直接還元法よりもDCF法の方が複雑な分、精密な収益価格を出すことができるのです。
一般的に現物の不動産投資を行う際、収益価格を細かくチェックすることはあまりありませんが、J-REITなどにおいて、物件を評価する際直接還元法とDCF法両方を必ず適用しなければならないといったルールがあるようです。
現物不動産投資において、物件の収益性が気になる場合は直接還元法を用いると良いでしょう。
区分マンションの収益価格を計算してみよう
収益価格を直接還元法とDCF法の二つで求めるやり方を学んだところで、実際に直接還元法を用いて区分マンションの収益価格を計算してみましょう。
直接還元法
では実際に、直接還元法を用いて算出してみましょう。
とある物件における年間の収支を下の表にまとめました。
家賃収入 | 1,494,000円 |
マンション管理費(修繕積立金) | -80,424円 |
賃貸管理手数料 | -52,290円 |
租税公課 | -36,211円 |
計 | 1,325,075円 |
今回はここで計算された額を年間の純収益と仮定して計算します。
この物件は還元利回り3.8%と算出されています。
先述のとおり、直接還元法では収益価格が、
収益価格 = 1年間の純収益 ÷ 還元利回り
で計算されます。
これを適用すると、収益価格が以下のように計算されます。
1,325,075円 ÷ 3.8% = 34,870,394円
まとめ
不動産投資を行うにあたって、様々な知識を身に付けておくことはとても重要です。
中でも積算価格や収益価格は、物件を評価する際の定量的な指標の一つですので、チェックしておいて損はないでしょう。
下記の記事では物件選びの実例を挙げておりますのでよろしければご参照ください。
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