【 目次 】
近年、都内を中心とした多くの自治体でワンルームマンションの建設に対する規制が強化されるようになっています。このワンルームマンション規制によって不動産投資にどんな影響が及ぶのかをしっかりと理解しておきましょう。
ワンルームマンションについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
ワンルームマンション規制とは
目的と背景
ワンルームマンション規制とは、自治体が単身者向け住宅の建設に対して何らかの制限を加えることを指しています。このような規制が行われるようになっている背景はいくつかありますが、規制の要因の一つとして、ワンルームマンションに暮らすことが想定される一人暮らし世帯の増加を避けたい、という思惑が存在すると考えられます。
では、なぜ一人暮らし世帯が増えることを避けたいと考える自治体があるのでしょうか。ワンルームマンションの主なターゲットである学生や若手サラリーマンなどの単身者は、地域活動に参加することが少なく、自治会など地域の活動が維持できなくなってしまう恐れがあることが問題の一つです。さらに、地域との関わりが乏しいために騒音やゴミ出しなどについてトラブルを引き起こしやすいというイメージがあることも関係しているでしょう。
また、ワンルームマンションに居住する住民の多くは比較的収入の低い若年層であり、住民票を移さないがために居住する地域で住民税を支払わない人も多くいると考えられます。自治体にとって住民から徴収する住民税は重要な財源であり、税収面から見ても単身者世帯ではなく家族連れ世帯が流入する方が、メリットがあると言えるのです。
対象地域
自治体によって規制の内容は異なりますが、現在では東京都特別区の全てで条例または建築指導要綱(建築物に関する指導要綱)による規制が行われています。東京都23区以外にも、ワンルームマンションの建設について規制を行っている都市は多くあります。
規制内容
規制の内容は各自治体によって異なります。例えば東京都特別区の場合、主な規制内容としては、一つの建築物におけるワンルームの部屋の割合に上限を設ける規制があります。一般的に、ファミリータイプであるかワンルームタイプであるかは、部屋の広さ(専用面積)で判断されます。自治体にもよりますが、30㎡もしくは40㎡未満の部屋をワンルームマンションと定めていることが多いようです。
規制の定め方も自治体によって違いがありますが、条例で規制を定めている自治体と、建築指導要綱(建築物に関する指導要綱)によって規制を定めている自治体とに分けられます。
【条例による規制】
建築基準法第40条に基づき、自治体が個別に条例を設けて建築に関する制限を定めているものです。このような条例は建築基準法と同じ効力を持つので、その地域内で建築物を建てるのであれば必ず従わなければなりません。
【指導要綱による規制】
条例や法律とは異なり、あくまで自治体が建築に関する行政指導をいかに行うかについて定めたものです。従って条例による規制ほどの効力はなく、遵守の義務はありません。実際、過去の裁判所の判例によれば、自治体の行政指導を受けた側には指導要綱に基づく協力要請に従うか否かの選択権があり、行政指導に従わないからといって地方自治体が法的な罰則を下す正当性はないとされています。このように条例に比べると効力の弱い要綱ですが、自治体側としては、条例のように議会での審議を必要とせず、自治体の組織内部で定めることができるというメリットがあります。そのため多くの自治体が条例ではなく指導要綱を策定して規制を行っています。
しかし実情としては、自治体から建築指導要綱違反に対する是正措置の勧告が出された場合、それが改善されるまでは、建築基準法で定められた建築確認申請が自治体に受理されない可能性も考えられます。従って、法的効力の弱い要綱であっても半ば強制力があるものとなっていると言えるでしょう。
ワンルームマンション規制の具体例
ここからはさらに詳しく、ワンルームマンション規制を行っている自治体の具体例を二つ見てみましょう。
東京都千代田区の場合
【規制方法】
千代田区は「ワンルームマンション等建築物に関する指導要綱」でワンルームマンションへの規制を定めています。この要綱に従って自治体と建築者との間で事前協議を行うことが定められています。
【対象建築物】
対象となるのは、次の二つの条件の両方に該当する建築物です。
- 専用面積が30㎡以下の住戸が、10戸以上の建築物
- 階数が地下を含めて4以上ある建築物
【建築設計についての規制】
地域の環境については以下のような条件があります。
- 空地と緑化を確保すること。
- ゴミ置場は、屋根・壁で囲った閉鎖型構造にすること。
- 自転車・バイク等の駐車場は、1住戸に1台以上の場所を確保すること。
- (プライバシー確保のため)隣家を見下ろすことのできる開口部には、目隠し等を設けること。
- (静寂な住環境確保のため)住民が歩く外階段・開放廊下の床仕上げ及び住民が開閉する玄関ドア等は、防音仕様とすること。
- 室外機(冷暖房・給湯等)及び台所等からの換気口の設置場所は、周辺環境に配慮し、外部からの見え方や安全を考えて設置場所・方法を検討すること。
- 巡回管理・引越し用の駐車スペースを計画し、駐車場を確保することに努めること。
いずれもゴミ問題や騒音問題、違法駐車問題など、周辺に既に住んでいる地域住民と新しく居住することになる住民との間のトラブルを極力防止するための内容となっています。
さらに住宅の環境については以下のような規制があります。
- 隣地境界線から建物外壁面までを50cm以上離し、隣地との間隔を取るように努めること。
- 1住戸の専用床面積は、25㎡以上とすること。
- ファミリー向け住戸の設置を促すため、住戸の総戸数が20以上となる場合には、ファミリー向け住戸(専用面積40㎡以上)の専用面積の合計が、全住戸の専用面積の合計に対して、3分の1以上となるようにすること。
さらに建築後の維持管理についても考慮した設計を行うことを要綱は求めています。
- 管理人室を設けること。
- 管理人を設置すること。総戸数が30戸未満の場合は定時巡回、30戸以上50戸未満の場合は1日4時間の駐在、50戸以上の場合は8時間の駐在を行うものとする。なお、システムによる巡回でも問題ない。
- 玄関ホール等の外部の人からも見やすい場所に、建物名称、緊急連絡先等を記載した表示板を掲示すること。
- 近隣住民に迷惑を及ぼす恐れのある行為を禁止するため、建物使用規則等を作成し、入居者にその内容を確認させること。
- 販売パンフレット、入居規約等に「住民登録のお願い」等の文章を入れて、入居者に住民登録の存在について周知・指導を行うこと。
住民登録を促すような規定があるのは、以前の住所から住民票を移さないことが多いワンルームマンションの単身居住者に住民票を移してもらい、自治体として対処しやすくしたり、税収を増やしたりすることが目的だと考えられます。
その他に、建築プロセス自体には直接関係ありませんが、維持管理上の留意点が定められています。例えば「ゴミ保管施設・収集規定、法令・使用規則違反者への措置、近隣協定の遵守・住民登録、町会加入の実施」を盛り込んだ使用規約の作成を求めています。
大阪市の場合
【規制方法】
大阪市は「大阪市ワンルーム形式集合建築物に関する指導要綱」及び「同施行基準」によってワンルームマンションへの規制を定めています。大阪市はこの要綱及び基準に従って建築申請確認前に事前協議を行うことを建築者側に求めています。
【対象】
ワンルーム形式住戸を1戸でも含んだ集合建築物は規制の対象となっています。ここでいう「ワンルーム形式住戸」とは、専用面積が35平方メートル以下の住戸のことを言います。
【規制内容】
建築計画が以下の内容を満たしていなければならないとされています。
- 住戸の専用面積は、18 ㎡以上とすること。
- 居室の天井の高さは、3 m以上とすること。
- 駐車施設について、住宅の全住戸数が30戸以上の場合は、「大阪市共同住宅の駐車施設に関する指導要綱」及び「大阪市共同住宅の駐車施設に関する指導要綱施行基準」の規定に基づいて設置すること。住宅の全住戸数が30戸未満の場合は、住戸数に応じた適切な数の駐車施設を設置すること。
- 駐輪施設については、「大阪市自転車駐車場の附置等に関する条例」及び「大阪市自転車駐車場の附置等に関する条例施行規則」に準拠すること。
- ワンルーム形式住戸数が30戸以上の場合は、管理人室を設置すること。
- 廃棄物保管施設(マンション内のゴミ捨て場)については、「一般廃棄物及び再生利用対象物保管施設の設置に関する要綱」の規定に従っていること。
- できる限り敷地内の空地を緑化すること。
その他に、管理に関する事項も事前協議の対象となっています。例えば次のような規定があります。
- 管理人の巡回又は駐在による管理を行うこと。ただしワンルーム形成住戸数が30戸未満の場合は、機械設備等による管理でも構わない。
- 建築物の出入り口などの見やすい場所に、管理者の氏名や住所、電話番号を記載した表示板を設置すること。また、その記載内容に変更が生じた場合はすみやかに変更しなければならない。
さらに大阪市では、建築後に、建築物の情報を記載した台帳を作成しなければなりません。そして市側はその台帳の閲覧請求ができるものとされています。
不動産投資に与える影響
これまで紹介してきたような、各自治体によるワンルームマンションへの規制は、不動産投資市場にどのような影響を与えることが予測されるのでしょうか。
まず、規制によって、今後新築ワンルームマンションの希少性が上がる可能性が高いと言えるでしょう。規制が行われる一方で、少子化や晩婚化・非婚化などに伴って単身者世帯の数は増加しています。そのためコンパクトな広さの物件を求める単身者の利用が減るとは考えられず、ワンルームマンションの供給が不足し需要が高まることが予想されます。その結果、ワンルームマンションの空室率は低下することが期待されます。従って、規制を行っている自治体では、規制対象となる広さのワンルームマンションの購入が不動産投資における今後の狙い目の一つになるでしょう。
まとめ
ワンルームマンション規制はワンルームマンションの供給を不足させることは間違いありませんが、一方でそれはワンルームマンションの希少性が上がることに繋がり、不動産投資としてはチャンスをもたらすと言えます。各自治体による規制の動向、内容を十分に理解して、今後の投資戦略に上手に活かしましょう。
ワンルームマンションを勧める3つの理由のワケについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
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