【 目次 】
2019年10月に、消費税が現在の8%から10%へと引き上げられることが予定されています。現在不動産投資を行っている方や、今後不動産投資を行うことを検討されている方にとっては消費税増税への不安は大きいのではないでしょうか。そこで今回は、消費税増税による不動産投資への影響や物件購入のタイミングについて解説します。
消費税増税の概要と不動産投資への影響
はじめに、2019年10月に予定されている消費税増税の概要や、不動産投資に与える影響について理解しておきましょう。
消費税増税の概要
安倍首相は2018年10月15日の臨時閣議にて、2019年10月から消費税率を現在の8%から10%まで引き上げることを表明しました。
消費税は1989年の消費税法の施行から開始され、当時の税率は3%でした。その後、1994年11月に3%から4%へ、1997年4月に5%へ、2014年4月には8%へと徐々に税率は引き上げられてきました。その後、景気低迷などを理由に再増税が2014年11月、2016年6月の二度にわたって先送りされていました。
所得税や法人税ではなく消費税を引き上げてきた理由について、財務副大臣(当時)の五十嵐氏は、「特定の者に負担が集中せず、高齢者を含めて国民全体で広く負担する消費税が、高齢化社会における社会保障の財源にふさわしい」と述べており、高齢化が進み、社会保障財源が必要となっていることが増税の主な背景となっています。
また、今回の増税の特徴として、軽減税率という制度が導入されています。軽減税率とは特定の品目に関して消費税を軽減するというものであり、同じ消費税の中でも標準税率と軽減税率という二つの税率が存在することになります。軽減税率の対象となるのは、酒類や外食・ケータリングなどを除く飲食料品、週二回以上発行される新聞とされています。
不動産投資への影響
それでは、不動産投資への影響としてはどのようなものが考えられるのでしょうか。
マンションやアパートの家賃収入は非課税
一点目に、マンションやアパートの家賃収入は非課税であるという点を考慮する必要があります。
家賃などの賃料には、課税対象となるものと非課税のものとの二種類があります。しかし、住宅の貸し付けであれば、貸付期間が一ヶ月に満たない場合などを除いて基本的に非課税とされています。ここでいう住宅とは、「人の居住の用に供する家屋または家屋のうち人の居住の用に供する部分をいい、一戸建ての住宅のほか、マンション、アパート、社宅、寮、貸間等」が含まれると定められています。そのため、家賃収入の額自体に関しては基本的に変化がないと考えて良いでしょう。
それ以外に、土地の譲渡や貸し付けに関しても、課税対象とはなっていません。一方、詳しくは後述しますが、事務所などの建物や駐車場などを貸し出す場合には課税対象となるので注意が必要です。
建築・修繕費に関する影響
二点目に、建築費や修繕費などの消費税負担が増えるという点が挙げられます。建築費や修繕費、その他の維持管理費やランニングコストなどはすべて課税対象ですので、増税により負担が増加します。
また、消費税増税前には駆け込み需要が発生し、建築費などの値上がりが生じる可能性があります。その対策として、2014年4月に消費税が8%まで引き上げられた際には、前年の9月末までに建築工事をしていれば引渡しが2014年4月以降でも消費税が5%のままとなる経過措置がとられました。今回も2019年3月末までに請負契約を結んでいれば税率は8%となる経過措置が予定されています。
不動産投資に関わる消費税
続いて、不動産投資ではどのような消費税がかかってくるのか解説します。
不動産投資を始めるときに課税される消費税
不動産投資を始める際に課税される対象としては、物件の購入代金、物件の建築工事などに関わる代金、仲介手数料、住宅ローン事務手数料、その他司法書士への報酬などが挙げられます。土地譲渡については消費税の課税対象とはなりません。そのため、物件の購入の際には土地価格が非課税、建物価格が課税対象となります。また、詳細な説明は省略しますが、不動産投資では支払いすぎた消費税の還付を受ける「消費税還付」という制度も存在しています。興味のある方は検討してみると良いでしょう。
物件を運営していく上で課税される消費税
先述の通り、一戸建てのほかマンション、アパート、社宅、寮など住宅の貸し付けは非課税となっています。ただし、これらの住宅に付随する駐車場に関しては、
- 一戸あたり1台分以上の駐車スペースが設けられており、自動車の保有の有無にかかわらず割り当てられている場合
- 家賃とは別に駐車場使用料等を収受していない場合
という二つの条件を満たす場合にのみ非課税となります。
また、土地の貸し付けは課税対象とはならず非課税です。ただし、貸し付けの期間が一ヶ月に満たない場合や駐車場・その他施設の利用に伴って土地が利用される場合は非課税とはなりません。従って、店舗や事務所などの建物を貸し付ける場合には課税対象となります。また、この場合に土地部分と建物部分とで家賃を区分していても、その合計額が建物の貸し付けの対価として課税対象になるので注意が必要です。同様に、駐車場や野球場などスポーツの競技場として貸し付ける場合にも賃料は課税対象となります。
また、賃料以外ではリフォームの代金などが課税対象となります。仮に新築の物件を購入したとしても、年数が経過すれば老朽化が進んで修繕が必要になりますし、中古物件であればなおさらです。リフォーム費用の発生時期は物件によりますが、消費税増税との関係で時期を再考しておくべきかもしれません。
ローンの返済利息は消費とは見なされず、非課税です。物件を購入する際には不動産投資ローンを使用する方が多いかと思われますが、今回の増税が返済計画を直接に乱すことはありません。
また、火災保険や地震保険の保険料も非課税です。ただし、今後消費税の増税に伴って保険料が値上がりする可能性もあるので注意が必要です。というのも、保険料自体は非課税ですが、保険会社が支払うことになる経費には消費税が課されるものも多く含まれているからです。そのため、保険料自体には消費税はかからないものの、増税により値上がりしたコストが価格に上乗せされる可能性があるのです。
不動産購入のタイミング
ここまで消費税増税の影響や不動産投資で課される消費税について解説してきましたが、物件を購入して不動産投資を始めるタイミングとしてはいつが適しているのでしょうか。
様々な費用への影響から考える適切なタイミング
物件価格や修繕費などの様々な費用への影響から考えると、やはり消費税増税前に不動産を購入する方が望ましいと考えられます。というのも、増税前と増税後では必要となる経費が大きく変わってくるためです。
具体例として、建物価格が2,000万円の物件を購入する場合を考えてみましょう。
建物価格のみを考えると、以下のようになります。
・消費税が8%の場合 2,000×1.08=2,160(万円)
・消費税が10%の場合 2,000×1.10=2,200(万円)
この時点でも40万円の差がありますが、不動産投資ローンを利用した場合には増分にも利子がかかるため総支払額が大きくなります。したがってその差はさらに拡大すると考えましょう。たかが2%の税額変更ではありますが、不動産のように価格が高いものの場合には与える影響も大きいのです。
増税が先延ばしされる可能性も
一方で、2019年の10月の増税までに焦って物件を購入しようとすることも危険ではあります。なぜなら、今回の増税も先延ばしにされる可能性があるためです。「消費税の概要」の項でも述べましたが、8%から10%への消費税の増税はもともと2015年10月に行う予定だったものが二度も延期されて今回に至っています。そのため、今回の2019年10月に予定されている増税も延期となる可能性があります。
従って、絶対に2019年10月までに物件を買わなければならないと焦ることは禁物です。焦った結果として条件の悪い物件を購入した場合の損失は計り知れません。増税の動向を観察しつつも、あくまで落ち着いて物件の購入を検討することをお勧めします。
消費税増税の影響を受けにくくするためには?
それでは、消費税増税の影響を受けにくくするためにはどのようなことに注意すれば良いのでしょうか。
土地価格の割合が大きい物件を選ぶ?
消費税の影響を受けないという一点だけに絞れば、安直ですが土地比率の高い物件を選ぶことでその影響を抑えることはできます。物件価格は土地価格と建物価格とに分けられますが、このうち土地価格が非課税であることを利用する方法です。
しかしこの方法は現実的とはいえません。同じ価格で土地比率の高い物件ということは、部屋数や部屋の面積が小さくなるということを意味します。また、一般的に言ってより郊外の物件ほど土地比率は高くなりがちであり、その地域の特性や開発計画などの条件が整わなければ、安定した投資は難しくなってきます。
消費税を警戒することが直接に利益に結びつくわけではありません。やはり重要なのは、どのような物件を購入するかという点であり、消費税はそのために必要な支出として基本的に許容する必要があります。
免責事業者から購入する
やや特殊な方法として、免責事業者と取引を行う方法もあります。免責事業者について理解するためには、事業者が最終的に納付する消費税の制度を理解する必要があります。
消費税はその制度上、最終的に事業者が納付することになります。このとき、納税額は課税事業者の売上に対する消費税額から仕入れに含まれる消費税額などを引いた額です。小売業者は消費者が支払った消費税を預かっている一方、商品の仕入れの際などには消費税を支払っているため、消費者から預かった税から支払った税を差し引いて納めるという仕組みになっています。
ただし、この課税事業者に該当するのはその課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者であり、課税売上高が1,000万円以下の事業者は納税の義務が免除されるという制度になっています。そのため、不動産を購入する相手が課税事業者でない場合には消費税は発生しないことになります。
たとえば、ワンルームマンションを一部屋だけ所有している個人投資家は、投資規模からいって免責事業者であることが予想されます。このような個人投資家から中古物件を購入した場合には、消費税を支払う必要はありません。今後消費税が増税されることに伴い、課税事業者か免責事業者かによって物件価格の差が出てくることも想定されます。そうした場合には、免責事業者から購入することで安く購入できる可能性があるということを覚えておくと良いでしょう。
まとめ
今回は消費税増税による不動産投資への影響や物件の購入のタイミングなどについて解説しました。消費税は建物の取得時に生じる一方、土地の取得時には発生しません。住宅用であれば賃貸収入も一般に課税対象とはなりませんが、用途や契約形態によっては課税対象となる場合もあるため注意が必要です。リフォーム費用が直接的に増税の影響を受けるほか、間接的に保険料にも上乗せが生じる可能性があります。今後不動産投資を始める方や、既に始めており物件の追加購入を考えている方などは、増税に伴ってご自身のプランをもう一度検討してみてはいかがでしょうか。
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