【 目次 】
今話題のビットコインですが、本当に投資先として問題はないのでしょうか。今回は、ビットコインについて基礎的な知識を確認した上で、ビットコインへの投資とは性質上対極な関係にある不動産投資と比較し、どちらの方が安定的な投資であるのかという点を中心に両者の投資への理解を深めていきます。
ビットコインとは何か
ビットコインとは、暗号通貨と仮想通貨の両方の側面を持った通貨の1つです。暗号通貨とは、暗号技術によって複製防止など安全性を確保している通貨のことで、仮想通貨とは、インターネットを通じて取引される実体のない通貨のことを指します。
より具体的な視点から見ると、ビットコインは、一般的に通貨という言葉から想像するドルや円のような法定通貨と違い、紙幣や硬貨などの実体がなくネット上で取引が行われます。また、通貨の管理が国家ではなく独自のプログラムによって行われている通貨だといえます。
しかし、ビットコインは法定通貨と同様にモノやサービスの対価の支払いに利用できるため、大きな枠組みとしては法定通貨と同じようなお金として捉えることができます。お金という枠組みの中で、ビットコインは今までのお金とは違う性質を有することで、より利便性が高く、安定した通貨になることを目指しています。
それでは、よりビットコインについての理解を深めるためにビットコインの特筆すべき特徴を見ていきましょう。
発行主体がいない
法定通貨の発行主体は政府や中央銀行であるのに対し、ビットコインの発行はプログラムが制御していて発行主体がいないという特徴があります。普通に考えると、発行主体がいない通貨は安全性が低く信用性を担保できないと思われるでしょう。しかし、ビットコインは通貨の発行履歴や取引記録がネットワーク上に分散して保存される仕組みとなっていて、これら全ての記録が全世界へと可視化されています。そのため、通貨の偽造などを防止することができ、安全性の高い次世代通貨として認められています。
価格変動が大きい
価格の変動が大きいということはビットコインへの投資が盛んになった理由の1つとして挙げられます。ビットコインの通貨の単位である1BTCの価格が2017年6月には30万円前後であったのですが、2017年12月には200万円を超えた期間もあり、半年の間で6倍以上になりました。しかし2017年2月8日時点では1BTCの価格が86万円の付近まで急降下しています。このように価格の高騰と下落を繰り返しており、未だに価格変動が大きいので投資の際にはハイリスクハイリターンが望めます。
しかし、価格変動の大きさ故に通貨としての有用性を疑う声もあります。一般的に通貨の要件の1つとして価値貯蔵という点がありますが、価格変動が大きすぎるとこの要件を満たさないため、ビットコインには通貨としての課題が複数残っています。
送金の便利さ
ビットコインは送金に関して高い利便性を持っていて、これは大きな強みとなっています。クレジットカードに対する優位性としては、会社への送金だけでなく個人間での送金を気軽に行うことができる点にあります。
また、銀行振り込みに対する優位性としては、営業時間に囚われずいつでも送金することができ、海外への高い送金手数料を安く抑えることができる点にあります。このようにビットコインは、既存の決済手段よりも様々な点において優れた性質を持っていると言えます。
ビットコインの投資としてのメリット&デメリット
ビットコインの投資におけるメリットとデメリットを確認していきます。
メリット
- 価格変動が大きい
先ほども説明したようにビットコインはとても価格変動が大きく、1日で10%以上の価格変化をすることもあります。そのため、一般的な投資では利益を上げるのに長い時間がかかりますが、ビットコインでは短期間で大きな利益を得るということもありえます。この点は逆に短期間で大きな損失を生む可能性があるとも言い換えることができ、デメリットともなり得ることに注意が必要です。
- 24時間365日取引可能
ビットコインに似た投資として、FXや株式がありますが、それらは取引を行える時間が決まっており、土日などは取引できません。しかし、ビットコインは24時間365日取引が可能なので、土日に取引を行いたい人なども利用することができます。
- 少額から投資可能
株式や不動産投資は、元手として必要な金額が数十万円から数億円と、大きな金額を必要とします。その一方で、ビットコインへの投資は数千円からでも可能です。ビットコインへの投資によって、数千円が数千万円になったという話もあります。一般的な投資よりもビットコインへの投資は敷居が低いため参入しやすく、少額で取引を行えば損失を出したとしても大きなダメージにならないというメリットがあります。
デメリット
- 現在価値が存在しない
株式や不動産投資では、配当や利子や家賃収入などのキャッシュフローがあり、将来その資産が生み出すキャッシュフローによって現在価値を割り出し、資産価値が決まります。しかし、ビットコインはキャッシュフローがないので現在価値を割り出すことができず、実際の資産価値を定めることができません。そのため、ビットコインには本質的な価値がないという結論を出すこともでき、ある時点から一瞬にして価値を失い、投資額が泡になり無くなってしまうリスクがあります。
- 投資指標がない
現在価値が存在しないことにも通底するのですが、ビットコインが本来どのくらいの価値を持つものであるか定まっていないため、ある時点の価格が割高であるのか割安であるのかということを決めることができません。ゆえに、株式投資で利用するようなPERやPBRのような投資指標がなく、価格が上がったから買うというような投資基準になりかねません。ビットコインの投資では、投資指標がないので投資の難易度としては高いといえるでしょう。
- 情報が不確実
ビットコインに関してはたくさんの情報が出回っていますが、未熟な分野であることもあり、情報の正確性は低いものが多いです。また、運用されてからのデータがまだたまっていないため、何が正しいのか分かっていないことも多いです。ビットコインの専門家も少ないので、ご自身の力で情報を取得し取捨選択していくことでリスクを抑えるしか方法がありません。
- 法整備が緩い
株式やFXの投資では預入資金は、証券会社などが倒産しても保証される仕組みとなっていて、不測の事態に備えることができる法整備がなされています。また、株式では、値幅制限があり、ストップ安になればそれ以上その日のうちには株価は下がらないようになっています。一方で、ビットコインの場合は、法整備が緩いため、ビットコインの取引を仲介する取引所や販売所が倒産した場合に、預入資金が保証されるところもあればされないところもあり、万が一のリスクがあります。また、値幅制限がないので、定期的に取引状況を確認しないと損失が知らないうちに膨らんでいるということもありえます。
以上のメリット&デメリットから分かるように、ビットコインは一言で言うとハイリスクハイリターンの投資といえるでしょう。現在では、ビットコインの高騰が頻繁に起こった時期を過ぎて停滞期を迎えており、ハイリターンに関しても疑問符が付きはじめています。投資の安定性という観点から見ると劣る部分が多く見受けられます。
不動産投資の投資としてのメリット&デメリット
不動産投資におけるメリットとデメリットを確認していきます。
メリット
- 収入が安定している
一番大きなメリットとしては、収入が安定しやすいことにあります。ビットコインと違い、家賃収入というインカムゲインがあることによって定期的に収入を得ることができます。将来的にも人口が減らず、安定した賃貸需要のある土地の不動産に投資をすれば、賃料が大きく下がることは考えにくいので、急激な収入の減少のリスクが低く長期的に安定したリターンが望めます。そのため、老後の年金を補助するための収入減として不動産投資を利用する人もいます。
- インフレ対策になる
近年、日銀によってインフレを促す試みが行われています。将来インフレが起きた場合、現金として貯金しているとインフレ率分だけお金の価値が目減りすることになりますが、不動産はインフレに乗じて資産価値や家賃価格も上昇すると考えられます。そのため、インフレでお金の価値を減らさないための対策として不動産投資が利用できるといえるでしょう。
- 相続税対策になる
株式などの有価証券や現金は相続する際には、時価額がそのまま資産価値として相続税の課税対象となります。しかし、不動産の場合は資産価値でなく評価額が相続税の課税対象となり、評価額が資産価値の約3分の1程度になることもあるので、大きく相続税を節税することに繋がることがあります。
- 生命保険の代わりになる
不動産を購入する際にローンを組む場合、団体信用生命保険という生命保険に加入することになります。これは、ローンの契約者が死亡したときや重度の後遺障害を患ったとき、ローンの残っている債務を一括して返済してくれるというものです。このとき不動産は資産として残るため、遺族に資産を残せるという点から生命保険の代わりになると言われています。
- 専門家が多い
ビットコインでは専門家が少なく、情報の不確実性が難点となっていました。しかし、不動産投資は、ビットコインとは違い昔から築き上げられてきた投資方法であるため、不動産投資に関する専門家も多く、情報量も豊富なので安心して投資できる分野といえます。
デメリット
- 老朽化が起きる
ビットコインや株式と違い、不動産には老朽化という観点があります。老朽化を放っておくと、空室のリスクに繋がり、安定的な収入が望めなくなります。定期的に修繕とメンテナンスを行うようにするなど、投資した後も放置せずにケアする必要があります。
- 様々なリスクがある
不動産投資の際には、認識しておかなくてはいけないリスクがいくつかあります。具体的には、空室リスク、金利上昇リスク、災害リスク、不動産価格下落リスクなどがあります。ビットコインなどよりも多角的な視点からリスクを考えなくてはいけません。しかし、これらのリスクは対策をすることができます。空室リスクに対しては需要のある物件を選ぶ、あるいは入居実績の高い管理会社に入居付けを委託することで対策可能です。また、金利上昇リスクについても適切な変動金利契約を行えば、その損失は十分に抑えることができます。災害リスクに対しては耐震性が高い不動産を選択することなど様々なリスク管理があります。
- 資金流動性が低い
ビットコインや株式では、売却してから現金化されるまで数日以内で完了するのですが、不動産を売却することになったとき、現金化されるまでは1か月以上かかってしまうという資金流動性の低さが欠点にあります。これは不動産の売値がはっきり決まっていないため、詳細な査定などが必要であることが1つの要因になっています。
- 税金の管理が大変
ビットコインや株式では、売却するときや配当金を受け取るときに税金がかかる仕組みとなっていて税金を払うタイミングがわかりやすくなっています。しかし、不動産投資の場合、購入時に不動産取得税、所有時に固定資産税・都市計画税・所得税、売却時に譲渡所得税が課税されるため、税金を払うタイミングがいくつかあり、それについての知識もあまり一般的ではありません税金に関して管理を怠ると、不動産経営の失敗に繋がりかねません。
以上のメリット&デメリットから分かるように、不動産投資は長期的視点で管理する必要はありますが、しっかりとした管理を行うことで安定的な投資ができるという性質を持っていることが分かります。短期的に爆発的な儲けをしたいというわけではなく安定的な収入が欲しい方や、年金の収入だけでは不安で老後の備えとして投資をしようと考えている方などに適しているでしょう。
ビットコインと不動産投資の税金の違い
先ほども申し上げましたが、ビットコインと不動産投資ではかかる税金が異なります。ビットコインの場合、かかる税金は「所得税」です。ビットコインの売買によって利益を得た分が雑所得として計算され、雑所得は給与所得などと合算し、所得税が計算されます。
たとえば、元々の給与所得が1,000万円であり、新たにビットコインで1,000万円利益を出した場合、合算した2,000万円に対して所得税がかかることになります。この場合、税率は40%で控除額が279.6万円なので、520.4万円が所得税となります(所得税=所得×税率—控除額)。
所得税率は所得金額に応じて5%から45%の間で変化します。課税されるタイミングは、仮想通貨を円に替えたときや他の仮想通貨を購入したとき、ビットコインで商品を買ったときなど、利益が確定したときです。ただし、雑所得が20万円以下の場合は課税対象となりません。
不動産投資の場合、購入時に「不動産取得税」、所有時に毎年、「固定資産税」・「都市計画税」・「所得税」、売却時に「譲渡所得税」が課税されることになります。不動産取得税は原則として固定資産の評価額から算出された課税標準額に対して3%課税されることになります。また、固定資産税は課税標準額に対して1.4%、都市計画税は地域によって違いますが課税標準額に対して約0.3%、所得税は先ほどのビットコインと同じように不動産所得と給与所得などを合算して計算され、これら3種類の税金を毎年払う必要があります。売却の際は、譲渡所得金額に対して、所有期間が5年以下であれば30%、5年を超える場合は15%が譲渡所得税として課税されます。
不動産の場合、不動産収入より必要経費が上回った場合、その損失分を給与所得などから差し引き、所得税の納税額を減らす、損益通算を行うことができます。しかし、ビットコインは雑所得になるので、雑所得内でしか損益通算ができません。そのため、赤字になったときに、支払う税金を減らすことができる点が不動産における税金のメリットです。一方で、ビットコインに関する税金のメリットは、利益確定時の1回のみの課税なのでシンプルでわかりやすい点にあるでしょう。
まとめ
今回は、ビットコインへの投資と不動産投資を比較して様々なポイントにおいて優劣を考えてきました。その中で、ハイリスクハイリターンのビットコインに対し、ローリスクで堅実な不動産投資という対比が浮かび上がってきました。ご自身の行いたい投資スタイルと照らし合わせて、両者の投資方法を検討してみてください。今回のテーマである安定性という面においては不動産投資が向いているので、ぜひご検討ください。
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