マンションの火災保険に入る理由は?相場や選び方と2022年10月から値上がる背景

マンションの火災保険に入る理由は?相場や選び方と2022年10月から値上がる背景

投資用・居住用に関わらず、マンションを購入する際に必ずと言ってもいいほど加入をすすめられる火災保険。

そもそも補償内容を正確に理解できないまま加入してしまったり、火災保険の加入についてお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

火災保険に加入していれば、投資用・居住用ともに万一のことがあった場合でも損失を最小限に食い止めることができます。

また、火災保険は2022年10月からの値上げが発表されました。(*一部保険会社は既に値上がり済み)

加入をおすすめする理由、火災保険の選び方や補償範囲だけでなく、値上がる内容や背景なども解説しておりますので、これから検討する方も、すでに契約をされている方の契約内容の見直しにも、是非お役立てください。

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マンションで火災保険の加入をおすすめする理由

火災保険とは、マンションなどの不動産と建物内の家具や家電が、火災や自然災害等によって被害を受けた際に、その被害を補償してくれるものです。

補償範囲は非常に広いため、不測の事態に備えて心強いリスク対策となるでしょう。

火災保険加入をおすすめする主な理由は、以下のとおりです。

  • 融資の条件であり、リスクを最小限に抑えることができる
  • 火災以外にも幅広く補償される
  • 特約加入やカスタマイズが可能

詳しく解説していきます。

融資の条件であり、リスクを最小限に抑えることができる

融資を受けてマンションを購入する場合、多くの金融機関で火災保険加入を条件としています。

これは、火災や自然災害等で担保となる融資対象の建物が滅失してしまっても保険金が支払われるようにしておき、金融機関が融資を回収不能となるリスクを回避するためです。

滅失にまで至らなくても、建物が被害を受ければ復旧に費用と時間がかかり、その間のローン返済が滞るリスクが高まります。

このようなリスクを軽減することは火災保険の重要な役割といえるでしょう。

また、火災が発生した時点で仮にローンが残っていたとしても、保険金を用いてローンを返済することが可能なうえ、保険金を使って別の投資を再開することも不可能ではありません。

このように、火災保険に加入していれば、万一のことがあった場合でも損失を最小限に食い止めることができます。

火災以外にも幅広く補償される

火災保険の大きな特徴は、補償される災害の発生原因が「火災」だけではなく、自然災害による被害にも適用が及ぶことです。

補償範囲に関しては後述しますが、近年では、水害や地震、竜巻などの大きな災害が各地で多発しています。

しかし、万一自然災害で住宅や財産に損害を受けても、国や自治体の支援は限定的です。

また日本には、隣室からの延焼があった場合でも、火災を起こした人に重大な過失が認められない限り、火災を起こした人は損害賠償義務が生じないという「失火責任法」と言う法律があります。

他にも、延焼そのものによる被害がなくても、消火活動により深刻な水漏れ被害が生じることもあります。

自然災害に限らず、ご自身に落ち度がない災害で被害を受けた場合に備えて火災保険に加入し、充分な補償を確保する必要があるでしょう。

特約加入やカスタマイズが可能

火災保険の強みは、特約加入やカスタマイズが可能なことです。

地震保険等の保険を兼用することで一つの火災保険に加入したり、不必要なものがある場合は除外して保険料を安くすることができます。

ただし、地域や補償範囲、保険期間などにより、負担する保険料は大きく変わり、補償内容がほぼ同じでも保険会社によって保険料は異なります。

マンションで優先的に加入したい特約には、以下のようなものがあります。

どれも加入するメリットが大きい特約なので、参考にしてみてください。

特約名称
※名称は保険会社による
概要
バルコニー修繕費用保険金 バルコニーは共用部にあたるため、専有部を補償する火災保険では適用範囲とならないことが多い。自身に過失責任がある場合、修繕費用は自己負担となるため、特約で加入する方が多い。
類焼損害特約 自宅からの出火で隣家に延焼してしまった場合、自身に賠償責任がなくても修繕費の補償が可能となる。今後の関係悪化防止につながる。
臨時費用保険金 火災保険金額の10%程度を受け取れる。
修理以外の細かい雑費(仮住まいの宿泊費や日用品の購入)に使用可能。

同じ保険会社の商品でも、借入先金融機関や不動産会社などを介して加入すると団体割引が適用され、個人で加入するよりも保険料が安くなるケースもあります。

金融機関や不動産会社から火災保険の提案を受けた場合は、必要な補償が確保できる内容かを確認したうえで、複数の保険会社で見積もりを行い、比較検討しましょう。

マンションの火災保険の適用範囲

火災保険の大きな特徴は、補償範囲が非常に幅広いことです。

水災などの自然災害や落下物などによる家屋の損傷に関しても適用範囲としています。火災保険の適用範囲を詳しく見ていきましょう。

分類 損害適用範囲
火災 火災・落雷・爆発・破裂
自然災害 風災・ひょう災・雪災
水災
日常生活 水漏れ・衝突や破壊
盗難
破損・汚損
その他 個人賠償責任(建物管理賠償責任補償・電気的または機械的事故補償・家賃収入補償など)
費用保険(臨時費用・弁護士費用・家主費用など)

一般的には「火災・落雷・破裂・爆発」と「風災・ひょう災・雪災」は加入必須の基本補償(主契約)となっており、そのほかの補償は任意で選択可能なオプション(特約)となっています。

注意点としては、豪雨による土砂被害は水災となったり、地震によって引き起こされた火災や津波は、火災保険の対象外になることです。また、火災保険の補償対象は建物と家財で別々になります。

家財の補償も希望する場合は、建物だけの加入とならないよう気をつけましょう。

よくある間違い|地震保険との適用範囲の違い

火災保険を検討する際によく比較されるのが地震保険です。火災保険と地震保険には、どのような違いがあるのでしょうか。

まず、地震保険の補償範囲を見ていきましょう。地震保険の補償範囲は以下のとおりです。

補償範囲 補償範囲外
地震や噴火、津波による火災
地震や噴火、津波による損壊
地震や噴火、津波による埋没、流出による損害
地震等の際に、保険の対象の紛失または盗難によって生じた損害
門・塀・垣のみに生じた損害
地震等が発生した日の翌日から10日経過した後に生じた損害
損害の程度が一部損に至らない損害

火災保険の補償範囲が幅広いのに対し、地震保険はその名の通り「地震」による被害に対する補償のみなので、わかりやすいでしょう。

火災保険と地震保険には、そのほかにも大きな違いがあります。火災保険と地震保険の主な違いは以下のとおりです。

火災保険 地震保険
保険料 保険会社により異なる どの保険会社でも同じ金額である
単独加入 不可
(火災保険と合わせて加入)
設定可能な保険金額 一定の保険金額を設定 火災保険の保険金額の30%〜50%の範囲内で上限あり(建物:5,000万円/家財:1,000万円)
支払われる保険金額 実際の損害額が支払われる 建物や家財の損害の認定を行い、地震保険金額の100%・60%・30%・5%のいずれかが支払われる

地震保険は政府と損害保険会社が共同で運営しているので、どの保険会社で加入しても同じ保険料で同じ補償を受けられます。

しかし、単独加入ができず、火災保険に比べて設定金額や支払われる保険金が限定されることを覚えておきましょう。

地震大国と呼ばれる日本に住む以上、地震保険への加入も大きなリスクヘッジとなります。少しでも地震被害に不安があれば、火災保険とセットで加入しましょう。

不動産投資における地震のリスクヘッジについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

2022年10月から値上がる!変更される火災保険の内容

2022年10月に火災保険が改定されます。主な改定ポイントは以下のとおりです。

【Point】

  • 火災保険料の値上げ(一部は値下げ)
  • 契約期間が最長10年から最長5年に短縮

実際にどれくらい保険料が値上げされるのでしょうか? 参考純率の改定率は以下のとおりです。

【築5年以上の場合】
都市名 M構造(マンション等) T構造(耐火住宅等) H構造(木造住宅等)
三大都市圏 東京都 +1.7% ▲0.6% +3.3%
大阪府 +15.3% +15.6% +24.6%
愛知県 +4.5% ▲2.1% +3.8%
最大 宮崎県 +30.5% +21.9% +24.6%
最小 山形県 ▲4.7% ▲11.6% ▲13.8%
【築10年以上の場合】
都市名 M構造(マンション等) T構造(耐火住宅等) H構造(木造住宅等)
三大都市圏 東京都 +7.3% +3.2% +5.9%
大阪府 +21.5% +22.4% +30.9%
愛知県 +9.3% +2.2% +7.6%
最大 宮崎県 +33.0% +33.4% +36.6%
最小 山形県 +1.1% ▲7.1% ▲10.3%

※保険金額は建物2,000万円、家財1,000万円とした場合の改定率

参考:損害保険料率算出機構「火災保険参考純率改定のご案内」

自然災害による被害の増加が今回の改定の背景にあります。

近年、台風や豪雨などによる水害や土砂災害が急増し、保険会社が支払う保険金が増えました。

保険会社の収支の悪化により火災保険自体が成り立たなくなってしまうことを防ぐため、保険料が改定になります。

また、自然災害のリスクは今後大きく変化していくと想定され、長期的なリスクの見通しを立てることが困難になることによって、火災保険の契約最長期間が10年から5年に短縮されることになりました。

火災保険の選び方と選ぶ時の注意点

ここからは、火災保険の選び方と選ぶ際の注意点について解説していきます。火災保険を選ぶ際のポイントは以下の3つです。

  1. 自分に必要な補償をカスタマイズできる保険を選ぶ
  2. 再調達価額(新価)で保険金が算出される保険を選ぶ
  3. 特約が選べる保険を選ぶ

それぞれ詳しく解説していきます。

自分に必要な補償をカスタマイズできる保険を選ぶ

ポイントの1つ目は、自分に必要な補償をカスタマイズできる保険を選ぶことです。

そのためにまずは、自分に必要な補償はなにか整理しておくことが大切です。

【1】補償対象

まず、補償対象を以下の3つの中から選びましょう。

  1. 建物のみ
  2. 家財のみ
  3. 建物と家財の両方

「建物」とは、建物本体だけではなく、例えば、物置や車庫、塀なども含まれます。「家財」とは、家具や家電、自転車などのことです。

先ほども触れましたが、火災保険の補償対象は建物と家財とで別になっています。

建物だけではなく家財の補償も希望する場合は、「建物と家財の両方」に加入するようにしましょう。

【2】補償範囲

先述のとおり、火災保険は火災以外の自然災害についても補償範囲としています。建物が川や海の近くだったり、台風被害のリスクが高い地域の場合は、水災の補償を付けると安心です。

国土交通省や各市区町村が作成しているハザードマップを参考に、建物の所在地に起こり得る自然災害があるか確認のうえ、必要に応じた補償を選択しましょう。

【3】地震保険の加入有無

火災保険加入時、地震保険にも加入することができます。

近年、日本国内で大地震が多く発生していることもあり、地震が少ない地域でもいつ大地震が発生するかわかりません。

地震による火災や水災は火災保険では補償されないので、任意ではありますが、地震保険に加入しておくことを強くおすすめします。

再調達価額(新価)で保険金が算出される保険を選ぶ

ポイントの2つ目は、再調達価額(新価)で保険金が算出される保険を選ぶことです。

保険料を決める際、「再調達価額(新価)」と「時価」という2つの考え方があります。それぞれの概要と特徴は、以下のとおりです。

概要 特徴
再調達価額(新価) 保険対象の建物と同等の建物を新たに建築するために必要な金額 新築に必要な金額を元に算出されるため、補償額は高くなる
時価 経年劣化などに伴って、下がった価値を差し引いた金額 経年劣化などによって価値が下がっていき、時価設定で補償額が算出されるため、補償額は低くなる

上記のとおり、時価よりも再調達価額(新価)の方が補償額は高くなります。そのため、再調達価額(新価)で保険金が算出される保険を選ぶようにしましょう。

特約が選べる保険を選ぶ

ポイントの3つ目は、特約が選べる保険を選ぶことです。

先ほども解説しましたが、補償に加えて特約に加入することができます。主な特約については先述の解説を参考にしてください。

特約は任意ですが、加入することによって、万一の際の大きな安心につながるでしょう。

特約の種類や内容は保険会社によって異なります。複数の火災保険を比較検討のうえ契約するようにしましょう。

保険料の相場はいくら?保険料が決まる要素

火災保険の保険料の相場はいくらなのでしょうか?

物件の構造や地域、補償の内容など、いくつかの要素によって大きく異なるため一概にいくらと言い切ることはできませんが、おおよそ年間1〜5万円となっています。

なお、先述したとおり2022年10月に火災保険が改定され、保険料が値上げ(一部は値下げ)されますので注意しましょう。

火災保険の保険料はさまざまな要素によって決定します。では、どのような要素によって保険料が決定するのかを紹介していきます。

保険料が決まる要素

保険料を決める主な要素は、以下の3つです。

  1. 補償内容
  2. 物件の所在地
  3. 建物の構造

それぞれ詳しく解説していきます。

補償内容

保険料を決める要素の1つ目は、補償内容です。

火災だけではなく、必要に応じて水災や盗難等の補償を付けることができ、万一のときのために備えることができます。

しかし、補償を手厚くすると保険料は高くなるので注意が必要です。

補償内容を決める際は、あたりまえではありますが、必要最低限の補償にすることで保険料を安く抑えることができます。

詳しくは「保険料を安く抑えるコツ」で後述しておりますのでぜひ参考にしてください。

物件の所在地

保険料を決める要素の2つ目は、物件の所在地です。

物件の所在地によって、水災等の自然災害リスクが異なります。

例えば、九州や沖縄は台風被害のリスクが高く、北海道はリスクが低い傾向にあり、川や海から近いと水災のリスクが高く、遠いとリスクが低いといえるでしょう。

このことから、リスクが高い所在地の場合、保険料は高くなるのです。

建物の構造

保険料を決める要素の3つ目は、建物の構造です。建物の構造は以下の3つに分けられています。

M構造(マンション構造) コンクリート造やレンガ造などのマンション
T構造(耐火構造) コンクリート造や鉄骨造などの一戸建て
H構造(非耐火構造) 木造や土蔵造などの一戸建て

木造は火災のリスクが高く、コンクリートはリスクが低いといえるでしょう。

このことから、耐火性が高いM構造よりも、耐火性が低いH構造の方が保険料は高くなります。

保険料を決める要素は保険会社によって異なりますので、契約時によく確認しましょう。

保険料を安く抑えるコツ

保険料を安く抑えるコツは以下の3つです。

  • 不必要な補償を外す
  • 長期契約を結ぶ
  • 割引制度を活用する

それぞれ詳しく解説していきます。

不必要な補償を外す

保険料を安く抑えるコツの1つ目は、不必要な補償を外すことです。

先ほど、火災保険は補償範囲が幅広いことについて解説しました。補償範囲を広げておけば安心ですが、その分保険料は高くなってしまいます。

保険料を安く抑えるために、不要な補償が含まれていないかよく確認し、不要な補償があれば外しましょう。

例えば、川や海から離れていて水害の危険性が低いと考えられる場合は、水害の補償を外すという方法です。

なお、国土交通省や各市区町村で作成されたハザードマップで、水害などの危険性がないか確認できるため、火災保険の補償範囲を決める際、確認することをおすすめします。

長期契約を結ぶ

保険料を安く抑えるコツの2つ目は、長期契約を結ぶことです。

保険期間をできるだけ長くし、保険料を一括で支払うと割引が適用され、支払い総額が安くなります。

一度に多額の保険料が必要になる点がデメリットではありますが、資金に余裕がある場合は長期契約を結ぶことがおすすめです。

現在の火災保険の保険期間は最長10年ですが、2022年10月より最長5年に短縮になります。

また、長期契約を結ぶ際は、補償内容に過不足がないか確認したうえで契約するようにしましょう。

割引制度を活用する

保険料を安く抑えるコツの3つ目は、割引制度を活用して保険料を安く抑える方法です。当てはまるものがあれば積極的に活用しましょう。

割引制度には主に以下のようなものがあげられます。

新築割引、建物築浅割引、耐火性能割引、ホームセキュリティ割引、オール電化割引、ノンスモーカー割引

保険会社によって、割引制度の有無や適用条件は異なりますので確認するようにしましょう。

まとめ:マンションの火災保険について

今回はマンションの火災保険加入をおすすめする理由や選び方、保険料を安く抑える方法など幅広く解説しました。

日本では今後も台風や豪雨、地震など大規模な自然災害が発生する可能性があります。自然災害はいつ発生するか予測することができません。

少しでも安心して過ごせるよう、火災保険や地震保険に加入することを強くおすすめします。

この記事で解説した、火災保険の選び方や保険料を安く抑えるコツを参考に、また複数の保険を比較検討のうえ、自身に合った火災保険を選びましょう。


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