【 目次 】
不動産投資は安定した家賃収入を得るだけではなく、可能な限り高く売却して利益を出すことが重要です。現在は不動産価格が上昇傾向を見せているため、売却の好機であるといえます。だからといって焦って売却行動を起こしてしまうと、買い手がつかない、思ったように高く売れないというリスクが生じることがあります。今回の記事では、マンション売却の際に起こりうる6つのリスクと、その対処方法をご紹介します。
売却スケジュール遅延によるリスクと対処法
不動産投資の特徴のひとつに流動性の低さがあります。株式や投資信託商品は市場がありすぐに現金化できますが、不動産は買い手がいなければ売却できないため、売却行動を起こしてから実際に売却、現金化できるまでに時間がかかります。
公益財団法人東日本不動産流通機構の発表した首都圏不動産流通市場の動向(2020年)によると、中古マンションの登録(売却行動の開始)から制約に至るまでの日数は中古マンションで平均88.3日、およそ3ヶ月となっています。
参考:公益財団法人東日本不動産流通機構 首都圏不動産流通市場の動向(2020年)
これはあくまで平均の日数であり、3ヶ月でどのような物件も現金化できるというわけではありません。場合によってはそれ以上遅くなることもあります。
もし売却益で新しい物件を購入したい、生活費に回したいという場合は、売却が遅くなると予定が大きく狂ってしまうことにもなりかねません。
このように、売却までの期間が予定より伸び、すぐに売却益を手に入れられないというリスクが「売却スケジュール遅延リスク」です。
売却スケジュール遅延リスクを回避するためには、以下のような対処法が有効です。
【対処法】マンション売却の流れを押さえておく
マンション売却までの大まかな流れは以下のようになります。
【1】仲介売買業者への相談、選定
【2】媒介契約の締結
【3】売買契約
【4】決済・引渡
【5】確定申告
この中で最も時間がかかるのは、上記の【2】媒介契約の締結から【3】売買契約の間で、先ほどご紹介した通り平均3ヶ月程度かかります。
それに加えて、締結前の準備や、締結後の決済・引き渡しに各1ヶ月程度かかった場合、売却の意志を持ってから実際に現金を手にするまでに4ヶ月程度かかるということが分かります。
そのことを理解し、余裕を持ったスケジュールを組むことで、多少の遅れが生じても調整をすることができるため、スケジュールの狂いが小さくなります。
また、最も時間がかかる【2】~【3】の期間を短くできるよう、売却に向いたタイミングを見計らうことも大切です。
以下の記事に売却までの流れや売却のタイミングについて詳しくご紹介していますので、併せてお読みください。
関連記事:今は売り時?不動産投資における7つの「売却タイミング」と見極め方
【対処法】適切な価格で売却する
上記でご紹介した通り、仲介契約の締結から売買契約までの期間をなるべく短くすることで、売却スケジュール遅延リスクを軽減できます。
そのためにも売却希望価格は適切に設定しておきましょう。
価格設定が高過ぎるとなかなか買手がつかず、販売期間が延びてしまいます。
自身で情報収集を行い、近隣の類似物件の大まかな相場をつかんでおくとともに、複数の仲介業者に査定を依頼して、適切な価格を把握するようにしましょう。そうすることで、次にご紹介する「価格下落リスク」を減らすことも可能です。
マンションの価格下落によるリスクと対処法
マンションが希望していた価格で売却できず、値下げを余儀なくされるリスクもあります。売却益でローンを返済する、もしくは新たなマンションを買うという場合は予定が大きく狂ってしまいます。
価格下落リスクが起こる原因は、大きく分けて2種類あります。
【1】価格設定のミス
【2】マンション自体の資産価値の低下
それぞれの対処法についてご紹介しましょう。
【対処法】適切な価格で販売する
価格設定のミスによる起こる価格下落リスクは、先ほどご紹介した通り、相場を知り、適切な価格で販売することで対処可能です。
【対処法】立地の良い物件を選ぶ
マンション自体の資産価値の低下による価格下落リスクが起こる理由として、周辺環境の悪化が挙げられます。
例えば近隣にあったショッピングモールが閉店した、大学が移転したという場合にはマンションの需要が下がり、それに伴い資産価値も下落してしまいます。
交通アクセスや周辺の施設の状態、再開発の予定などの情報を集め、資産価値の落ちにくいエリアでの物件購入を検討することで、売却時の価格下落リスクを軽減することができます。
【対処法】適切な管理を行う
同じくマンション自体の資産価値の低下による価格下落リスクを軽減するためには、マンション管理を適切に行うことも重要です。
特に築古のマンションの場合は、いかに管理に手をかけているかによって資産価値が大きく変わります。共用部分の清掃・管理や大規模修繕が適切に行われているかを確認し、質の良い管理会社が運営しているマンションを選ぶようにしましょう。
不動産会社の「囲い込み」によるリスクと対処法
「囲い込み」とは、不動産会社が売却依頼を受けた物件の情報を市場に公開しない行為のことをいいます。市場に情報を公開せず、自社で買主を見つけることで、売主・買主双方から仲介手数料を得る「両手仲介」が実現でき、大きな利益になることから、囲い込みを行う不動産会社も存在しています。
しかし、売主からすると売却の機会が制限されるため、売却までに時間がかかったり、希望した金額で売却できなかったりというリスクが生じます。
不動産会社に売買の仲介を依頼する際には、
【1】専任媒介契約(一社とのみ契約を結ぶ)
【2】専属専任媒介契約
【3】一般媒介契約(複数の業者と契約を結ぶ)
といった、3通りの契約方法があります。
そのうち【1】と【2】(以下合わせて専任契約と呼ぶ)は媒介契約締結後所定の期限以内にレインズ(不動産流通機構が運営している不動産情報交換のためのコンピューターネットワークシステム)に物件情報を登録し、他の業者にも情報を公開することが義務づけられています。
しかし、レインズに登録してもすぐに情報を消す、他の業者からの連絡があっても「担当者が外出中」、「売主と連絡が取れない」などと言って交渉をさせないというケースもあるため、安心はできません。
【3】であれば複数の不動産会社と契約を結べるため、情報が1社に囲い込まれないというメリットがあります。しかし、だからといって囲い込みを完全に阻止できるわけではありません。
むしろ、一般媒介契約はレインズへの登録が義務づけられていないため、売主が不動産売却についての知識がなく、他社と合い見積もりを取っていないことが明らかである場合はあえて一般媒介契約を勧め、レインズの登録を免れるというケースもあります。
【対処法】信頼できる不動産会社を選ぶ
上記でご紹介した通り、いずれの契約法においても囲い込みは完全に排除しきれるものではありません。囲い込みを防ぐ方法としては、契約方法を考慮するよりも信頼できる不動産会社を選ぶことが重要です。
一般媒介契約であれば他社とも契約をすることを伝えてみましょう。
専任契約への切り替えを提案してくるようであればレインズの登録を避け、囲い込みを狙っていた可能性があります。
また、専任契約の場合も、「レインズに登録したらこちらでも確認するので連絡してほしい」、「囲い込みをしないことを約束する旨を契約書に入れてほしい」と相手にはっきり伝えることで、囲い込みのリスクを減らすことができます。
そうした相談への対応を見ることで、その不動産会社が信頼できるかどうかを判断することができます。売主の立場に立って親身に相談に乗ってくれる不動産会社であれば安心して売買仲介を任せることができるでしょう。
【対処法】レインズの登録状況を確認する
レインズ内の情報は、基本的には指定の流通機構に登録している不動産会社しか見ることができません。しかし、売主であれば取引情報を確認することができます。
取引情報を閲覧には、不動産会社から受領する「登録証明書」に記載されているIDとパスワードが必要です。それを使って「売却依頼主物件確認」画面にログインし、登録情報を確認できます。
登録情報を確認する際には、以下の点に気をつけるようにしましょう。
【1】取引情報
「公開中」となっていることを確認します。
指示をしていないのに「売主都合で一時紹介停止中」となっていたり、何の連絡もなく「書面による購入申込あり」となっていたりする場合は囲い込みをされている危険性があります。
【2】図面の登録
間取り図や写真などの図面が登録されているかを確認します。
登録されていない場合はあえて物件情報を隠し、囲い込みを狙っていることも考えられます。
もちろん、登録してすぐは図面の準備が間に合っていない場合がありますが、登録後1ヶ月を経過しても図面が公開されていない、自社のサイトにはきちんと図面が公開されているという場合には注意が必要です。
また、先ほどご紹介した登録証明書にて図面の有無が分かりますので、併せて確認しておきましょう。
【3】広告転載部分
レインズで広告転載区分を「可」に設定しておけば、不動産ポータルサイトでも無料で広告活動が行われます。
希望する場合は契約時に「広告転載部分は『可』としてください」と伝えておきましょう。
また、複数の不動産ポータルサイトで自分のマンションが掲載されているかも確認しておくと良いでしょう。
ローン特約による解除のリスクと対処法
不動産投資用物件を購入する際、多くの場合、買主は不動産投資ローンを利用します。融資審査は売買契約が結ばれた後に行われますが、万が一融資審査に通らなかった場合、売買契約を白紙撤回できるという制度があります。それがローン特約(融資特約)です。
ローン特約があると融資審査に落ち、資金を用意できなかった場合は契約自体がなくなり、契約締結時に支払った手付金や仲介手数料も返金されます。
買主にとってはありがたい制度ですが、売主にしてみると売却を進めていた物件の契約が白紙に戻ってしまいます。その結果、売却活動が長引き、売却スケジュール遅延リスクにつながります。
【対処法】仮審査を通った売主とのみ売買契約をする
融資審査に通らず、ローン特約によって契約が撤回されると売主はもちろんのこと、不動産会社にとっても大きな問題になります。そうした問題を発生させないようにするため、仮審査があります。
仮審査は購入する物件が決まった時点で買主が金融機関に申し込むことができます。この仮審査を通過した人が売買契約を結び、金融機関に本審査を申し込みます。そうすることでローン特約による契約解除のリスクはぐっと小さくなります。
不動産会社には、「仮審査を通っている買主とのみ売買契約を行いたい」という希望を伝えるようにしてください。
ただし、仮審査を通ったからといって、本審査に必ずしも通るわけではないということは理解しておきましょう。
売主の契約不適合責任によるリスクと対処法
不動産売買における契約不適合責任とは、引き渡しをした物件が契約の内容に適合していない場合、買主が売主に対して追求する責任をいいます。
例えば排水管の損傷により雨水が侵入する物件を売却する場合、それを売主が買主に説明して了承を得、売買契約書にその旨を記載していれば契約不適合責任は負わずに済みます。
しかし、契約書に書かれていなかった場合は、「排水管には損傷がない」という前提のもと契約を結ぶため、契約内容と異なるものを販売したということになります。この場合、売主は契約不適合責任を負うことになります。
契約不適合責任において追及される責任には契約解除、損害賠償請求、追完請求、代金減額請求があり※、例えばこのケースでは排水管修理を請求される場合があります。不具合の程度によっては大きなトラブルに発展することもあるため、しっかり対策を行っておきましょう。
※契約不適合責任は令和2年の法改正により瑕疵担保責任から転換したもので、令和2年4月1日以降に締結された契約が対象となります。
それより前の契約では瑕疵担保責任が適用され、責任内容は契約解除、損害賠償請求の2種のみです。
令和2年(2020年)4月の民法改正による瑕疵担保責任(契約不適合責任)の変更点についてはこちらをご参照ください。
関連記事:瑕疵担保責任、隠れた瑕疵とはどんなもの?2020年4月民法改正の内容も解説
【対処法】売却するマンションの状態を調査する
契約不適合責任によるリスクに対処する方法として、「インスペクション(建物状況調査)」を利用するという手があります。
インスペクションとは住宅の設計・施工に詳しい専門家が住宅の劣化や不具合の状況について調査を行い、欠陥の有無や補修すべき箇所、その時期などを客観的に検査するものです。
インスペクションを行っておけば、万が一欠陥や不具合があった場合も、契約に記載する、買主に了承を得るといった対策が取れます。また、インスペクション済み物件であることを買主にアピールできる、売却後に買主から瑕疵があることを主張された際の反論材料になるというメリットもあります。
2018年4月1日に行われた法改正において、売買契約締結時にインスペクション業者のあっせんの可否を示し、売主・買主の意向に応じてあっせんすることが宅建業者に義務づけられました。それによってインスペクションはますます普及し、それに伴って重要性も増していくと考えられます。
当然のことながら調査には費用がかかりますし、売却できないような甚大な不具合が見つかってしまう場合もあります。それでも透明性の高い取引を行ない、後々のトラブルを未然に防げることは大きなメリットになります。
【対処法】契約書を確認し、不明点は不動産会社に確認する
契約不適合責任の対象は、上記でご紹介したような物理的な欠陥や不具合だけではなく、心理的・環境的瑕疵も含まれます。
心理的瑕疵はその物件において事故や事件が起こったなど、心理的に住みづらい不具合を指します。
環境的瑕疵は近隣で騒音、悪臭、振動などが発生しており、快適に住むことが難しい不具合を指します。
契約書には物理的な瑕疵だけではなく、そうした心理的・環境的瑕疵についても盛り込まなくてはなりません。
また、将来起こりうる環境的瑕疵が分かっている場合にはその旨についても記載します。
例えば近隣の建築計画により景観が損なわれたり、騒音が発生したりする恐れがある場合はその影響についても記載しなくてはなりません。
契約書に正確な情報が記載されているかを確認し、不明点・不安点は不動産会社に質問するようにしましょう。そのためにも、親身になって対応してくれる不動産会社を選ぶことは非常に重要です。
設備の告知不十分によるリスクと対処法
マンションを売却する際には、付帯設備表と呼ばれる書面に設備の不具合状況を記載します。
先ほどご紹介した契約書に盛り込む内容は物件全体をとらえた物理的・心理的・環境的瑕疵を買主に伝えるものですが、こちらの付帯設備表は住宅設備の物理的な不具合に特化した書面であるという違いがあります。
不具合をきちんと伝えていなかった場合、売却後にトラブルになる恐れがあります。
【対処法】マンションの付帯設備や不具合について告知する
設備の告知不十分によるリスクを回避するためには、付帯設備表に情報を漏らさず記入することが重要です。
付帯設備表には設備について「水まわり」、「居住空間」、「玄関・窓・その他」の区分に区分けされており、「設備の有無」の欄にある「有」・「無」・「撤去」のいずれかにチェックを入れます。「有」にチェックを入れた設備で不具合など買主に伝えたいことがある場合は「ガスコンロに焦げあり」、「洗面台の鏡にヒビあり」というように記載します。
中古マンションは設備になんらかの不具合がある場合が多く、契約書には設備に関しては契約不適合責任を免責する契約書が交わされることが一般的です。
契約不適合責任を免責にするためには、付帯設備表に設備の状況を漏らさず記入し、買主に告知することが必要です。また、購入検討者に提供する判断材料にもなるというメリットもあります。
なるべく早く、また正確に作成しておくようにしましょう。
まとめ
不動産売却における6つのリスクとその対処法についてご紹介しました。
不動産は現物資産であり、また経年により劣化する、流動性が低いという特徴があることから、他の資産にはない売却時のトラブルやリスクが生じることがあります。
しかし、いずれもある程度は予測可能なものであり、スケジュールに余裕を持ってしっかり準備をすることで回避することができます。
不動産会社は単に物件を売却するだけではなく、そうした売却リスクを最小限にとどめるためのサポーターでもあります。実績のある信頼性の高い不動産会社を選び、しっかりサポートしてもらうこともリスク回避のための重要な対策です。
プロパティエージェントは不動産管理会社として、マンションの資産価値を維持できるよう適切な管理を行っています。また、専門知識を持ったスタッフが不動産の売買仲介や投資不動産の買取・買替についても徹底的にサポートします。
購入から管理、売却まで全ての段階においてオーナー様一人ひとりの状況や意向に沿った運用法を提案し、大切な資産であるマンションを最大限に活用できるようお手伝いたします。ぜひ、一度ご相談ください。
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