【 目次 】
都心と郊外では、同じような賃貸マンションでも賃料が大きく異なることはご存知の通りです。こうした違いは、不動産を投資対象として見た場合の性質にも大きく関わってくるため、それぞれのエリアの特性をしっかりと把握したうえで物件を選ぶことが重要です。
こんなに違う!都心と郊外の不動産事情
賃料相場
まず、賃料の相場の面で都心と郊外を比較してみましょう。
都心の分譲マンションの平均賃料はここ数年少しずつ上昇しており、さらに郊外と比べて1m2あたりの賃料が1,000円以上高くなっています。これに対して郊外では近年の都心での賃料上昇傾向に反し、少しずつ賃料の相場が下がっているエリアも見られます。
東京23区内の分譲マンションについて、1m2あたりの平均賃料の推移を見てみましょう。株式会社東京カンテイの市況レポートによれば、2012年の3,016円以降平均賃料は上昇が続いています。2015年には3,265円/m2にまで上昇していた賃料は、2016年にも1.9%上昇し3,326円/m2に上がり、2017年には一時横ばいになりましたが、2018年には前年比5.3%の上昇をみせ、3,501円/m2と推移してきました。
逆に郊外での平均賃料の推移を見ると、これとは全く異なる変化を見ることができます。例えば、横浜市の分譲マンション賃料は長期間横ばいで推移しています。2012年から2016年まで一貫して2150円/m2前後をやや下落気味に推移し、2017年には2,270円/m2と大きく上昇こそしましたが、続く2018年に再び下落傾向に戻り、2,238円/m2へと推移しました。埼玉市や千葉市でもそれぞれ1,800円前後や1,500円前後を上下する横ばいの推移を示しています。
これらの値を視覚的に整理すると、その傾向の違いを見て取ることができます。
空室率
空室率を都心と郊外で比較したとき、都心の方が空室率は低いという傾向が知られています。都心部の方が通勤や生活の全般において利便性に勝るため、賃貸物件の需要が高い状況が続いているのでしょう。賃料の上昇もこうした需要増加を背景としており、都心部への人口集中が続く限りは低空室率と賃料の値上がりが続くことでしょう。
また、近年大学やオフィスが都心回帰の動きを見せていることもこうした動きに拍車をかけています。郊外の人口流入を支えていた大学やオフィス、工場がエリアから撤退すると、空室率は突然大きく増加してしまいます。一方でそうした動きの結果都心部の地価と賃料の値上がりが起こっており、この動きがいつまでも続くとは限りません。なお、こうした傾向はエリアや物件を概括した文字通り傾向にすぎないことは言い添えておきます。
価格
近年は特に東京23区の人気のある地域で投資用物件への需要が上がっています。特に、千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区など再開発が進んでいる地域は住宅需要の増加が見込まれ、先んじて投資を試みる投資家が増えています。同時に、比較的若い世代が通勤・通学時間を考慮して、多少家賃が高くても利便性の高いエリアに住居を求める傾向があります。そのため、安定した賃貸収入を求める投資家から都心の物件が人気を集めています。
投資熱の高まりに伴い、都心の投資用ワンルームマンションは値上がりを続けています。この値上がりを嫌う投資家は都心へのアクセスの良い郊外に投資先を求めるようになり、結果として郊外でもワンルームマンションの値上がりが起こっています。ただしこうした傾向は全て都心へのアクセスの良さを前提としています。したがって不動産投資を考える際に最も重要なのは、都心へのアクセスの良い物件を相場より比較的安めに購入するという考え方でしょう。
利回り
物件価格の値上がりと賃料の値上がりが同時に起こっているので、利回りはそう変化していません。都心の物件では賃料を高く設定することで、購入価格の高さを補っています。賃料が多少高くても入居者を得やすいのが都心物件の利点ではありますが、物件価格の高さは思わぬコストを伴います。固定資産税や都市計画税が物件の価値に応じて課税されるため、比較的高額になってしまうのです。このことから、都心の物件は入居率が高い一方で、利回りが低い傾向にあります。
一方で郊外の物件は都心の物件よりも初期投資額が低く済みます。稼働率が安定して得られるのであれば、その分想定される利回りは高くなります。しかし、高利回りには高いリスクが付随するということを肝に銘じておかなければなりません。一般的に郊外の方が都心よりも空室のリスクが高い分、想定していた家賃が回収できない可能性もあります。郊外エリアでは都心へのアクセスの良し悪しを含む物件情報を細かにチェックして空室の生じにくい物件を購入しなければ、想定利回りを実現できないのもしばしばです。
流動性
流動性とは、物件を売却する際の買い手のつきやすさや現金化のしやすさを意味する概念です。一定期間の賃貸経営後、売却によって利益を確定し回転を早めるような戦略では、必ず流動性を考慮しなければなりません。
流動性の高低は需要の多寡と直接結びつきます。需要の高い都心部では資産価値が落ちにくく、投資目的の買い手がつきやすいため、流動性が高いと言えます。同様に郊外の物件であっても、交通の便が良い人気のエリアならば十分に高い流動性を持っています。しかし先述のようにそのエリアの人気を支えていた大学やオフィス、工場、あるいは商業施設などがひとたび移転してしまうと、買い手がつかなくなり赤字物件をしばらく抱えるという事態を招きかねません。
同じ賃料で比較した場合の広さ
同じ賃料で比較した場合、郊外物件の専有面積が広い傾向にあります。都心で広い部屋のある物件を探すと、賃料は高額にならざるを得ません。しかし、子供を持つ家族世帯は家具の数、部屋数両方の必要性から広い面積のある物件を求めます。このことから、郊外にある賃料あたりの面積の広い物件には特定の需要が見込めます。ただし専有面積が広い以上、リフォームや修繕をする場合には多くのコストを要します。
都心のマンションに投資するメリット・デメリット
それでは、実際に都心の物件に投資した場合のメリット、そして付随するデメリットを見ていきましょう。
都心のメリット
賃料設定
都心にある物件の一つ目の利点として、高い賃料を設定できることが挙げられます。高い賃料と言っても当然相場相応の設定にはなりますが、相場相応の設定をしていれば入居者を得られるというのは、不動産投資において十分すぎるほどのメリットです。需要の不安定なエリアでは入居希望者がなかなか現れず、賃料を段階的に下げて様子を見ることもしばしばです。このような入居付の対策のために賃料がずるずると下がる事態を招きにくい点は、都心物件の大きな強みと考えるべきでしょう。
入居者を得やすい
都心にある物件はそれだけで強力な訴求力を持ちます。2017年にSUUMOが引っ越しを行った人に対して行ったアンケートでは、「家を探すときに重視する項目」(複数回答可)として、物件の立地が重要視されていました。具体的には、一位の「家賃」に続いて、「路線・駅やエリア」、「最寄り駅からの時間」、「通勤時間・通学時間」の三つの項目において、約60%から55%の対象者が重要視したと回答しました。それに対して、「面積」や「築年数」を重要視した入居者は40%以下となりました。このことからも、入居者が賃貸物件を選ぶ際には立地や交通の利便性を重視することがわかります。
実際、都心の物件では賃料あたりの面積は小さくなりますが、人気が途絶えることはほぼありません。この傾向は築年数についても同じ傾向があり、郊外の物件が持たない「都心」というステータスは他の物件の諸条件を凌駕するインパクトを持ち得ます。
稼働率の高さ
高賃料・高入居率は不動産経営の安定性をもたらします。東京は都市圏としては世界で最も多い人口を抱えており、世界で最も人口密度の高い都市圏として知られています。この高い人口密度に下支えされた住宅需要により、不動産経営の最大のリスクである空室リスクを最低限に抑えることができます。この性質は都心の物件でなければ得られないものです。
なお、こうした傾向は当面の間続くと予想されています。東京都総務局統計部による「東京都区市町村別人口の予測」(2017年)によると、東京都都心の人口は2025年までは安定して上昇を続けることが予想されています。2025年以降も人口流入は続くため、日本全体で起こっている人口減少の勢いに比べれば穏やかな減少が続くと予想されており、当面この高水準の人口密度がなくなることはありません。2020年に開催予定の東京オリンピックの開催の影響もあり、今後も都心における賃貸物件の稼働率はしばらくの間は高くなることが見込まれます。
流動性の高さ
都心物件の利点として、その需要の高さゆえに、資産価値が高い状態が維持されやすいことが挙げられます。築年数がかなり経過してしまっている物件であっても、売却の際に価値がある程度保たれた状態での売買契約が期待できます。都市部では最寄り駅による価格上昇トレンドもあり、うまくタイミングを合わせればキャピタルゲインを狙える場合もあります。
都心のデメリット
購入時の価格
都心の物件を投資対象とする際のデメリットの最たるものが、購入時の価格です。都心の物件はその需要の高さと立地の良さから、購入時の価格が比較的高い傾向にあります。高額での物件購入は利回りの低下を意味するため、注意が必要です。
競争率の高さ
都心部では未開発の土地があまり残されていません。このため投資用物件の新築や中古物件の販売が常に需要に対して十分量あるわけではありません。とりわけ収益が見込める物件ともなると、他の不動産投資家との競争率は高くなります。このため望む条件を満たした物件を希望価格で手に入れる幸運は稀で、やむなく郊外の物件に投資先を変えざるを得なくなることもあります。
融資
都心物件の高い需要は融資に関する失敗を招く場合があります。都心物件はその需要の高さにより本来の物件の価値よりも明らかに高い価格設定がされている場合があります。そのため、実勢価格と評価額が大きく離れていると金融機関が判断した場合に、収益の見込みが立たないと見なされ融資が受けられなかったり、一部融資にとどまり自己資金が求められたりします。競争の中で早期契約に走ってしまうことなく、あくまで冷静に相場を見極めて投資を行う必要があります。
郊外のマンションに投資するメリット・デメリット
価格の安さ
郊外の物件の第一のメリットは、やはり購入価格が安く抑えられることです。購入価格が安いということは利回りが高くなることを意味します。高い稼働率が維持できるのであれば、結果的に都心の物件よりも高い収益を生み出す物件となるかもしれません。特に、都心で働く人が多く住むベッドタウンや、大学のキャンパスが近くにあり学生の入居希望者が多いエリアは一定数の賃貸物件需要が見込めるので、安定して収益を得られる可能性が高くなります。
競争率の低さ
都心ほど競争が激しくないことも郊外の物件の利点と言えます。郊外エリアは主要な鉄道の沿線に広がっており、その多くが住宅街となっていることから投資用物件に事欠きません。他の投資家に望む物件を先取りされることは頻繁には起こらず、自らの希望する条件を十分に追求することができます。
入居付けに不安
見落としがちですが、選択肢が豊かなのは入居者側にとっても同じことです。都心へのアクセスという一点だけの魅力では多くの選択肢があるため、その中から自身の物件を選んでもらうために、リフォームや最新式の設備を整える必要があるかもしれません。
エリアの開発状況に大きく左右される
繰り返しになりますが、郊外の人気はエリア周辺の状況に大きく左右されます。都心への通勤を前提にしたエリアならば大きく価値が変化することはありませんが、大学やオフィスなどそのエリア内での移動を前提にしている場合には、そうした施設の移転による大きな価値変動のリスクを把握しておかなければなりません。
今、都心で不動産投資を始めるべき理由
人口流入
東京都総務局統計部による「東京都区市町村別人口の予測」(2017年)によると、2025年までは東京都心の人口増加が見込まれています。今から不動産投資を行なっても、ピークを迎えるまでに7年の猶予があります。2025年以降についても、都心人口は減少が予想されていますが、その減少傾向も緩やかな下降で、2025年以降に急激に不動産の価値が落ちるとは思われません。
オリンピックの影響
都心での不動産投資がお勧めできる一つの理由として、オリンピックの開催とそれに付随する都内の再開発と住宅需要の増加があります。オリンピック会場として予定されている湾岸エリアを中心に再開発が勢い付いています。例えば、バレーボールや体操、テニスなどが行われる予定の有明、水泳競技やトライアスロンが行われるお台場周辺、カヌーとボートといった水上競技が予定されている海の森周辺では、実際にマンションの価格も上がってきています。不動産経済研究所の調査によると、2017年上期に首都圏で発売された投資用マンションの平均価格は2,826万円となっており、2016年同期に比べて72万円(2.6%)上昇しています。平方メートル単位でも平均価格は111.9万円となり前年から0.6万円(0.5%)の上昇が見られました。
オリンピック後の開発を見込めば遅くはない
一方、オリンピックを見込んだ不動産投資にはもう出遅れているとの意見もしばしば聞かれます。たしかに既に開催まで1年に迫った今、都心の不動産に手を出しても期待できる利益は小さくなってしまうとの不安も頷けます。しかし実際には、2020年以降も再開発が予定されている場所が多くあります。それらのエリアを中心に、オリンピック以降も継続的に土地やマンションの価値が上がっていくと予想されています。
特に、品川、渋谷、東京、虎ノ門、日本橋といった駅のあるエリアでの再開発は大規模に行われている、もしくは行われる予定があります。再開発の利点は新しくできたビルへの企業誘致であり、就業人口の増加は住宅需要の増加をもたらします。今都心で不動産投資を始めることで、数年後の住宅需要増加に伴う価格上昇で収益を得ることができるかもしれません。
都心での不動産投資を勧めたい人
都心への不動産投資がなおも期待できる投資先であると強調してきましたが、やはり初期資金が必要になる点は大いにネックに感じるかもしれません。しかしサラリーマンはこの融資を得やすいことから都心への投資に適していると言えます。サラリーマンは「与信」という目に見えない財産を持っているからなのです。
「与信」というのは簡単に言えば、「この人はいくらまでの金額であれば、返済ができる信用がある」と金融機関などが評価する信用力のことです。給与の安定している正社員(いわゆるサラリーマン)であれば、通常与信がかなり高く設定されます。このためサラリーマンは比較的容易に不動産投資用の融資を受けることができます。まずは自分がどれほどの金額を借りられるのかを確認し、次にその資金内でいくらの物件をターゲットとするのかを決めると良いでしょう。その後、自分の受け取り融資可能額と返済のプランを十分に立てた上で、都心の物件への投資を考えてみましょう。
まとめ
ここまで、都心と郊外の投資物件を比較しました。一般的な傾向として、都心部は価格上昇が続いており、継続的な開発と人口流入が見込まれることから、空室リスクの低い物件と言えます。一方郊外の物件でも都心へのアクセスに優れたエリアの人気は高く、価格上昇も控えめであることから今後も堅調な人気が続くと予想されています。ただし郊外の大学や企業に依存したエリアは今後の再開発に注意して投資を行う必要があります。とはいえ、都心・郊外ともに家賃や価格も様々ですので、それぞれの要素のバランスをよく考えていくのが重要です。総合的に自分にあった投資物件を探すことを心がけましょう。
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