【 目次 】
先日、不動産会社であるプロパティエージェント社が「SBI AI&Blockchainファンド」への出資を発表しました。一見AIやブロックチェーンと無関係に思われる不動産業界ですが、今後は密接な関係になっていくことが予想されます。
プロパティエージェント社による出資の概要
出資の概要と狙い
プロパティエージェント社は、「SBI AI&Blockchainファンド」というファンドに出資しました。同ファンドはSBIホールディングス株式会社の子会社で、SBIインベストメント株式会社が設立・運営しています。ファンドとしての投資対象はAIやブロックチェーン、フィンテック、IoT、ロボティクス、シェアリングエコノミーなどに主軸を置いたベンチャー企業を対象としています。それら市場成長期待の高い分野において、イノベーションを起こすことができるようなユニークで高度な技術やサービスの提供へ出資していく計画です。
プロパティエージェント社が出資した狙いは、AIやブロックチェーン技術に関する最先端の情報をいち早くキャッチし、不動産の領域に先進的な技術を導入することによって中長期的な事業領域の拡大を目指すということにあります。
他の業界と比べれば、不動産業界でのIT技術導入は遅れをとっていました。しかし近年では、不動産投資のクラウドファンディングや不動産販売者と購入者のマッチングサービス、VRで内見できるサービスなどが登場しています。これらのサービスは、不動産とITが融合したサービスとして不動産テックと呼ばれ、ますます増加の傾向にあります。さらに今回、プロパティエージェント社がブロックチェーンなどの未成熟の最先端技術に出資を行いました。このように、現在不動産業界では、既存のIT技術のみならずAIやブロックチェーンといった最先端技術の活用に注目が集まっています。
ブロックチェーンとは
ブロックチェーンとは何か
ブロックチェーンとは、電子取引における新たなデータ管理システムのことを指します。今までは、例えば銀行の帳簿システムでは銀行という特定の信頼のおける管理者の元でデータが管理される、「中央集権型」のデータ管理システムが利用されていました。しかし、ブロックチェーンでは、特定の管理者がデータを管理するのではなく、複数のコンピューターに分散して情報を管理する「分散型」のデータ管理システムという特徴を持ちます。この性質から、ブロックチェーンは分散型取引台帳システムと呼ばれることもあります。
ブロックチェーンが発明されたのは、従来の電子取引での問題点を解決するためであったとされています。従来の方式では、100円分のコインしか持っていないのに決済のタイムラグを使って2人の相手に対し同時に100円分のコインを送金することも不可能ではありませんでした。これは明らかに不完全なシステムであり、極端に言えば100円が実質的に200円分の価値を持ってしまう状況だったのです。今まではこの問題を第三者の監視によって解決していました。しかし、サトシナカモトは、ブロックチェーンの仕組みを考案することによって、この問題の解決が可能だと示しました。
ブロックチェーンの仕組み
ブロックチェーンは、一つ一つの取引台帳が「ブロック」となり、互いに「チェーン」で連結されているという構造を持ちます。この構造はそのままブロックチェーンという名称にも用いられています。
もちろん、互いにデータを接続するのにはセキュリティ上の目的があります。取引データの入ったブロックの中には、隣のブロックの台帳データを暗号化した情報が同梱されているのです。ブロックの中に隣のブロックの暗号化データが入っていることによって、悪意ある改ざんへの対策として機能します。例えば一つのブロックの取引データを改ざんしようと思っても、その隣のブロックに格納されている暗号化データとの整合性がとれなければ、不正が発覚してしまうのです。
この構造はさらにチェーン状に連鎖しています。つまり、たとえ隣の暗号化データまでも改ざんできたとしても、さらにその隣のブロックに格納された暗号データによって改ざんは露見します。このようにブロック間での相互保証がチェーン状に繰り返され、結局全てのブロックを改ざんしなければ、データの改ざんは実現しません。したがって、ブロックチェーンは事実上データの改ざんができないシステムであると考えられています。
暗号化についても補足しておきます。暗号化には「ハッシュ関数」というものが利用されています。ハッシュ関数によって取引データの内容を一定の文字数の文字列「ハッシュ値」に置き換えることができます。例えば、「あいう」をハッシュ関数によって、「dhs356p」というハッシュ値に置き換えるといったようなイメージです。
ハッシュ値には特筆すべき特徴が三つあり、これらがブロックチェーンの技術を支えています。一つ目が、取引データの内容が1文字変わったらハッシュ値は全く別のものになるという特徴です。例えば、「あいう」は「dhs356p」ですが、「あいえ」は「fji2os3」のように、規則性のない異なるハッシュ値に変換されます。二つ目が、同じデータからは同じハッシュ値が出てくるという特徴です。三つ目は、ハッシュ値から元のデータを再現することはできないということです。これまでの例で言えば、「dhs356p」から「あいう」を復元することはできません。これら三つの特徴によって、元データをハッシュ値にするというシンプルな方法を用いるだけで、データの改ざんを防ぎ、安全な取引ができるようになっています。
ブロックチェーンの特徴
ブロックチェーンの特徴としては、以下のような点が挙げられます。
- データの改ざんが不可能であること
上記のとおり、一部のデータの改ざんを試みると、全てのブロックを改ざんしなくてはいけなくなり、事実上データ改ざんが不可能だという点が大きな特徴となっています。 - 中央集権的でないこと
ブロックチェーンでは多くの利用者によって情報が共有され、全体で管理するシステムなので、中央に管理者は存在しません。これによって、特定の管理者の利害によって取引データがコントロールされることを防ぎます。 - ビザンチン将軍問題への耐性があること
ブロックチェーンは多くの利用者によって管理されていますが、一部の利用者のコンピューターが故障したり、嘘をついていたりしても、それに関係なくブロックチェーンとして正常に動き続けるという特徴があります。管理者が増えても脆弱な対象が増えているわけではありません。 - 単一障害点の排除
単一障害点とは、システムの要となる部分で、その部分が動かないとシステム全体が障害となってしまう部分です。たとえば、従来のデータ管理システムでは、中央管理者であったり、認証局であったりがそれにあたります。ブロックチェーンは、この単一障害点を持たないことを特徴とします。これによって、システムの障害が起きる可能性を大きく抑えています。
様々な領域でのブロックチェーンの活用例
ブロックチェーンの非中央集権的な構成と高い信頼性を基盤にして、仮想通貨が価値を持って流通し始めました。当初こそ、ブロックチェーンは仮想通貨だけに利用されていましたが、現在では様々な領域でブロックチェーンが用いられ始めています。
- 金融業界
ブロックチェーンは、電子取引におけるデータ管理システムなので、電子取引が多く行われ逐次記録することが求められる金融業界で歓迎されました。例えば、アメリカのNasdaqは、未公開株式取引システムであるNasdaq linqにブロックチェーンの技術を利用しています。 - 流通分野
ブロックチェーンの全ての人が取引を見ることができ、データ改ざんをすることができないという特徴は、流通分野において大きなメリットをもたらしています。例えば、食品にバーコードをつけ、どこで誰が生産し、加工し、販売したのかというような流通経路をブロックチェーン上に記録することができます。これによって食品の安全を客観的に保証することができます。 - 鑑定業務
鑑定業務にもブロックチェーンを活用する流れがあります。例えば、ダイヤモンドの認定証を発行する際に、そのダイヤモンドの形状をセンサーで読み取りデータ化してブロックチェーン上に掲載します。このダイヤモンドの取引ルートまで追跡することによって、消費者が確実に本物のダイヤモンドを購入できるようにするものです。鑑定の裏付けというポジションでブロックチェーンが利用されていると言えます。 - レンタル業界
今後はレンタル業界での活用も見込まれています。たとえば、複数のレンタル会社の在庫の情報をブロックチェーン上に載せて共有するということが考えられます。これによって、あるレンタル会社には在庫がないため、他のレンタル会社から調達するといったこともできるようになります。ブロックチェーン上でレンタル品のレンタル経路は分かっているので、レンタル品の所在が不明になるということもありません。
不動産投資とブロックチェーンの関係
以上では、ブロックチェーンが仮想通貨の業界にとどまらず、様々な領域に利用されていると言うことを紹介しました。現時点では未発達ですが、不動産投資にもブロックチェーンが用いられる可能性があります。以下で今後の展望を確認していきましょう。
スマートコントラクトとは
不動産投資での活用に限定するなら、スマートコントラクトを実装できるブロックチェーンが利用されると考えられます。まずはそもそもスマートコントラクトとはどういうものかという点から確認しましょう。
スマートコントラクトとは、一定の条件の下で契約を自動的に遂行することができる仕組みです。この仕組みは、しばしば自動販売機を例にして説明されます。自動販売機では、お金を入れて商品のボタンを押すことで商品を購入することができます。これは、お金を入れて商品のボタンを押すという条件の下で、自動的に商品の取引契約が成立するというプログラムが機械として組み上げられた状態であると解釈できます。このように、自動的に契約が実行されるシステムこそがスマートコントラクトという概念が意味するものです。スマートコントラクトでは、システムとして自動的に契約が履行されるため、契約相手の信用を重視する必要性が減り、コスト削減などのメリットが望めます。
スマートコントラクトを活用した不動産投資の将来像
スマートコントラクトを実装したブロックチェーンを活用することによって、不動産投資はどのように変わると考えられるのでしょうか。以下に例を挙げます。
- 不動産取引の電子化
スマートコントラクトを実装したブロックチェーンを利用することで、不動産取引の際の登録、契約、決済などを全て電子化することができ、オンライン上で不動産取引を完了することができます。 - 契約の簡素化
ブロックチェーン上の契約は、透明性が高く改ざんも不可能であるため、従来のように不動産取引における信用を第三者機関に依頼する必要がなくなります。これによって、契約を簡素化でき、コスト削減も望めます。 - 不動産管理の簡素化
スマートコントラクトを実装したブロックチェーンを利用することで、取引を行った際に自動的に登記簿を更新していくようなシステムを構築することができます。自動で登記簿を作成してくれるうえ、ブロックチェーン上で管理できるので管理コストを大きく削減できます。
このように、スマートコントラクトを実装したブロックチェーンによって、従来のシステムに比べて、不動産投資の幅を広げたり、無駄なコストを省いたりすることが期待されています。
関連記事:ブロックチェーンと不動産投資の未来
まとめ
今回は、不動産投資とブロックチェーンの関係性について説明してきました。ブロックチェーンは、現在はまだ現実社会との接点がわかりにくい技術ですが、急速に発展を遂げている分野であり、今後は現実社会に密接に関わるものになるでしょう。その中の一つとして不動産投資分野への参入があります。ブロックチェーンが導入されるとコスト削減などのメリットが予想されています。今後の動向に注目していく必要がありそうです。
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