一棟アパート投資で陥りやすい3つの失敗例

一棟アパート投資で陥りやすい3つの失敗例

不動産投資を始めるにあたり、一棟所有にするか区分所有にするかで悩んでいる方も多いのではないでしょうか。一棟アパート投資は、家賃収入を一気に増やしたい人にとっては魅力的な投資手法に思われますが、戸数が多い分、区分所有にはない難しさもあります。今回は、一棟アパート投資で初心者が陥りやすい失敗例3つをご紹介します。

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一棟アパートとは

不動産投資の形態には、大別して「一棟アパート」と「区分所有」があります。

一棟アパート投資とは、数戸〜十数戸の部屋数がある建物全体を購入し、各部屋を賃貸に出して運用することを指します。普通は土地付きです。多くは木造ですが、近年ではRC造物件も増えてきています。

一方で区分所有とは、建物全体を所有するのではなく、1~数部屋だけを所有することを指します。分譲マンション等の区分所有物件を購入し、賃貸することで不動産収入を得ます。

これだけを読むと、一棟アパート投資と区分所有は所有する戸数が違うだけのように思われますが、実は一棟アパートへの投資は、区分所有にはない多くの特徴があります。

「一棟アパートのほうが儲かるらしい」といった噂を耳にした方や、「せっかく大きな買い物をするのだから、自分の城として一棟買いをしてみたい」という夢をお持ちの方もいるでしょう。

しかし実は、一棟アパート投資は区分所有と比べて失敗のリスクが高い投資方法であると言わざるを得ません。本記事では、一棟投資のリスクがなぜ高いのかを解説します。

一棟アパート投資の失敗例~空室率が上がってしまう

周辺エリアの需要とミスマッチな物件を買ってしまう

どんな形態であれ、不動産投資においては必ず、物件周辺の家賃相場や入居者の需要を事前にリサーチすることが欠かせません。

入居候補者は学生なのか、子連れ家族なのか、単身サラリーマンなのか?

彼らはどんなライフスタイルで、どのような部屋を好むのか?

候補となるエリアについてしっかりリサーチをして、こうしたことをよく吟味しなければ、適切な間取りや設備を決めることはできません。

もし周辺エリアに関するリサーチが不十分だと、せっかく一棟アパートを買っても需要に見合わず、入居者が集まらない結果となってしまいます。

需要の変化に対応しにくい

一棟アパートは戸数が多い分、物件の所在エリアの需要が変化した際の影響を強く受けるといわれています。

  • ケース①:学生向けアパートを経営していたが、大学が移転してしまった

たとえば、大学街で一棟アパートを経営する場合を考えてみましょう。入居者のターゲットは一人暮らしの大学生であるため、アパートの間取りはワンルームで設計し、不動産経営は順風満帆かに思われます。

しかし、そのエリアからもし大学が移転してしまったら?

入居中の学生は多くが転出し、それまでならば毎年どんどん入っていた新入生の入居者も、全く入らなくなってしまうかもしれません。

極端な例のようにも思われますが、近年、少子高齢化と大学改革を巡る動きの中で、私立大学、とりわけ私立女子大学や短期大学は新規学生の募集停止、共学化などの変化を強いられている状況があり、土地の安い郊外に移転するというケースも見受けられるため、非現実的な話というわけではありません。

  • ケース②:リビングからの眺めが悪くなってしまった

新しい住居に引っ越すことを考えてみましょう。何を最も重視してその家に住みたいと思うでしょうか。リビングやベランダからの眺望を大事な要素の一つとして考慮する方もいるでしょう。しかしながら、物件のセールスポイントとして、「南向き」や「ベランダからの眺望がよい」を売りにしていた場合、いざ、向かいに新しくマンションが建設されるとなるとどうでしょうか。隣接していた邸宅の持ち主が亡くなるなどして、遺族が既存の建物を処分して、新たにマンションを建築するケースがあります。そのためにベランダからの眺めが変わり、さらに、工事に伴う騒音も加わり、居住者が転居を考えることは珍しくありません。

これらの例に限らず、一般的に、エリアの特性や、そのエリアにおける賃貸住宅への需要が変化してしまうと、これまで需要のあった賃貸物件に入居者が付きづらくなるということがあるので注意が必要です。

区分所有であれば所有物件ごとにエリアや間取りを変えることで、ポートフォリオ的なリスク分散が可能です。

しかし一棟所有ではどの部屋も似たような設備を備え、似たような入居者を想定しているはずですから、一度所在エリアで大きな変化が起きると、一棟全体について入居状況が悪くなり、家賃収入が落ち込みかねません。

一棟アパート投資の失敗例~維持費がかさむ

いざアパートを購入すると、物件の管理人としての責任が生じ、住民間のトラブルへの対応や、土地柄によっては、地域的な付き合いへの負担感も大きくなります。また、10年単位で大きな修繕費が生じたり、地震や火災、風水害などの天災リスクへの対応が必要になったりすることにも注意が必要です。

中古の一棟アパートのリスク

物件が老朽化した場合の修繕費用について考えてみます。一棟所有に典型的な費用としては、アパート全体の維持管理費が挙げられます。たとえば、外壁塗装工事の相場は塗る面積にもよりますが、例えば3階建てならば、おおよそ150万円〜400万円程度が必要です。

新築の一棟アパートであれば、最初から自分で修繕計画を立て、計画に沿って共益費による修繕費の積み立てを進めることができます。そのため、塗装の剥がれといった通常想定される老朽化に対する修繕費用は大きな問題になりにくいでしょう。

一方で、中古の一棟売り物件の場合は注意が必要です。物件は一定年数を経るごとに大規模なメンテナンスが必要となりますが、そのタイミングを直前に控えた物件を敢えて売りに出すオーナーもいます。物件を購入しようとしている投資家がビギナーだとすると、そのような物件を売りに出すオーナーはいわば「先輩投資家」です。必要となるメンテナンスの時期、規模、費用といった具体的な情報を、ビギナーの側は持っておらず、先輩投資家の方は熟知していますので、知識の差から、ビギナーが泣きを見ることは珍しくありません。

投資物件における修繕のタイミングや目安のコストについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

災害のリスク

不動産を所有すると、火災保険や地震保険に入ることになります。しかしながら、いざ被災した場合、保険に入っていたとしても思いのほか自弁を強いられるケースもあり、一棟アパートを所有しているとその支出の規模は大きなものとなります。

特に注意喚起をしたいのが、地震に伴う液状化現象です。液状化による土地の劣化は、基礎工事時点における対策でない限り未然に防ぐことは難しく、また一度液状化現象が起きてしまうと、その地域全体の家賃相場に影響が出ることもあります。想定していた賃料よりも相場が下がってしまった場合に、区分所有に比べて一棟所有のほうが、利益損失の開きが大きくなってしまいます。

不動産投資で地震がリスクになることについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

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一棟アパート投資の失敗例~「儲からない物件」を買ってしまう

金融緩和による金利の低下や融資条件の緩和もある状況下、サラリーマン投資家にとって不動産投資のハードルはそれほど高くありません。だからこそ、初心者が物件価格の安さにつられて「儲からない」物件を買ってしまうといった失敗例は無視できません。

「儲からない物件」とは

ここでいう「儲からない物件」とは、建物に瑕疵を抱えた単なる不良物件を指すのではありません。

不動産投資の初心者が、価格の安さや人気エリアといった個別の要素に惹かれて一棟アパートを購入したものの、想像していたほどの収益が得られない……。こうした、つい初心者が買ってしまいがちな「儲からない物件」について説明します。

区分所有よりも投資判断が難しい一棟アパート所有

区分所有の場合、広さや間取り、駅からの距離といった諸条件を揃えることで、複数の物件の価格を様々な面から比較し、自分の予算や希望に合った物件を選定することができます。

また、1つの物件あたりの価格が一棟アパートほど高くないため、特に複数の物件を区分所有するような場合には、「儲からない」物件を1件買ってしまったとしてもリスクは低く抑えられます。

加えてワンルームであれば、流通戸数が多いことから流動性も相対的に高く、より良い物件が見つかった場合や儲からないと判断した場合に売却することが比較的容易と言えます。

一方で、一棟アパート所有の場合はどうでしょうか。

間取りや駅からの距離などの条件に基づく比較は可能ですが、物件の規模が数戸~十数戸と様々であることから、区分所有に比べると単純な比較検討が難しい側面があります。

しっかりと比較検討することなく、単純に価格が安いといったことにつられて購入してしまうと、入居率が低いなどの要因で期待した収益を得られない結果になりがちです。

また、一棟アパートは区分所有に比べると高額であることから、複数所有してリスクを分散させるというやり方は、初心者にとって現実的ではないでしょう。

一棟アパートの比較方法 ~キャッシュフローに注目する~

区分所有か一棟所有かにかかわらず、不動産投資において大切なことは、明確な投資基準を持ち、予想される収益を数字に落とし込んで比較することです。

区分所有であれば、物件ごとの「利回り」を計算することで比較的容易に比較検討が可能です。

ところが一棟アパート所有では、建物ごとに戸数も大きく異なれば、投資規模も大小様々です。当然ながらローンの規模も違い、また長期的にその物件を保有することの意義も異なります。そのような場合、単純に利回りを基準にして比較しようとしても、互いに適切な比較の対象にならず、どのように判断すればよいのかが分からない、といったことが起きます。

このような際に参考にすべき指標は、投資のキャッシュフローです。

キャッシュフローとは、家賃収入からローン返済額、諸経費、固定資産税などを差し引いた残額がいくらになるのかという数字を言います。

一棟アパートの場合は、物件ごとに想定されるキャッシュフローを、その物件価格で割りましょう。すると、一定の投資金額あたりのキャッシュフローを指標として算出することができます。この指標は、物件価格が大きな一棟アパートでも、物件価格が小さな一棟アパートでも、それぞれの物件価値をある意味で平等に示していると考えることが出来るでしょう。

つまり互いに特徴の異なる一棟アパートであっても、この指標によって分かりやすく比較することができるようになるのです。

ただしこの指標の計算の際には、満室時のキャッシュフロー、入居率80%時のキャッシュフロー、入居率50%時のキャッシュフローという形で複数のパターンを考えて、多面的に比較することが望ましいといえます。

なおキャッシュフローの基本的な考え方については、以下の記事を参考にして下さい。

投資物件におけるキャッシュフローの重要性について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

一棟アパート所有であれ区分所有であれ、投資基準が曖昧なまま物件を購入してしまうのは危険です。自分なりの投資基準を設け、それを上回った物件にだけ投資するという方法が、「儲からない物件」を買わないために重要となります。

まとめ

以上、一棟アパート投資における失敗事例を見てきました。区分所有にはない、一棟所有特有のリスクについて、把握できたでしょうか。一棟アパート所有には、大きな金額が動く魅力はありますが、維持管理にかかるコストや時間には注意が必要ですし、物件の収益性を判断することは区分所有よりも難易度が高いものです。この記事で解説した点を参考にして、不動産投資におけるリスクの芽を一つひとつ潰していって下さい。
下記記事では、不動産投資における主な投資パターンとそのメリット・デメリットについて解説していますので、よろしければこちらもご参照ください。

不動産投資の失敗パターンについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。


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