【 目次 】
マンション経営をするうえで、経営観点を持つことは必要不可欠です。特に収支の知識は重要で、不動産投資のシミュレーションをする際にも、利益を最大化するためにも、十分な理解が求められます。今回は収支の知識、特に経費や税金について解説していきます。
マンション経営に必要な収支の知識
マンション経営における利益も、通常通り収入から経費を差し引くことで求められます。マンション経営の収支にはどのような要素が関わるのかを見ておきましょう。
収入
マンション経営で得られる収入としては、敷金・礼金と毎月の家賃、おおよそ2年ごとの更新料が挙げられます。
家賃の金額は物件の立地・状態・間取りなどを考慮して決定しますが、借り手が見つからない場合は金額を下げることになります。
また、借り手が途切れてしまうとその期間の収入は無くなってしまい、維持費だけが嵩んでいくというリスクもあります。
このため、物件の価格と需要の兼ね合いで借り手が退居しても、またすぐに次の入居者が見つかるような価格設定や立地である物件を吟味することが肝心です。
費用
初期費用
マンション経営には何かとお金がかかります。まずは、マンション経営の知識やスキルを身につけるために、セミナーを受講したり書籍を購入したりすることもあるでしょう。
いざマンション経営を始めるにあたって収益物件を購入する際には、物件価格に加えて以下のような初期費用がかかります。
- 消費税
- 不動産の仲介手数料(売主物件の場合は不要)
- 印紙税
- 登録免許税
- 司法書士手数料
- 不動産取得税
ローンを組んで購入する場合、さらにローンの事務手数料・保証料も必要です。
施設維持費等
マンション購入後は、維持費として管理費・修繕積立金や設備の修繕費、ローン返済費(利息分を含む)、減価償却費、そして税金などを定期的に支払うことになります。
また、入居者を募集するための広告費や、入居者退去時のハウスクリーニングを依頼する出費も忘れてはなりません。
これら初期費用と維持費のように、マンション経営で売上を出すためにかける費用を経費と呼びます。この経費については、普通の支出とは別途で帳簿へ記録し、確定申告の際に集計して書類へ記入する必要があります。
利益
売上に当たる家賃収入から経費を差し引いた額が、マンション経営で得られる利益(収益)で、これが事業主の所得となります。
売上のうち、所得税・住民税といった税金がかかるのはこの利益の部分のみで、経費の部分へ課税されることはありません。このため、継続的な経営のためにも、経費の管理が重要になってきます。
マンション経営の経費には何を計上できる?
先述の通り、経費には税金がかかりません。何を経費として計上できるかを理解していないと余分な税金を払ってしまう恐れもあります。
とはいえ、関係ない費用を計上すると税務署からペナルティを受けることになってしまいますので、きちんと理解しておきましょう。
マンション管理にかかる費用・修繕費
管理組合に対して毎月支払う建物管理費・修繕積立金、賃貸管理会社に支払う手数料など、マンションの管理に関わる費用も経費に含まれます。
また、修繕積立金や内装の工事費、エアコン・給湯器といった設備の交換費用も計上できます。さらに、火災保険・地震保険といった損害保険料については、1年分ずつであれば計上することができます。
逆に一括で支払った場合、その年に全てを計上することはできません。
外注費
確定申告で税理士に作業を依頼した場合や、トラブルが起こり弁護士に相談した場合、司法書士への報酬についても経費へ計上できます。
租税公課
税金には様々な種類がありますが、特に経費として認められている項目については租税公課と呼ばれる勘定科目で経費へ計上します。
これは国や地方自治体によって徴収される税を指す「租税」と、税以外の会費や賦課金を指す「公課」を合わせたものです。
初期費用にかかる税金では不動産取得税や印紙税、固定資産税、登録免許税など、定期的に支払う税金では固定資産税や都市計画税、個人事業税などがこれに該当します。
なお、事業主個人にかかる税金である所得税や住民税、罰則的な役割である延滞金・罰金などは経費として計上することができません。
減価償却費
建物や機械設備など、高額かつ長期に渡って使用できるものについては、法定耐用年数の期間内に一定の割合ずつ経費として計上していくことが法律で定められています。
この毎年計上する割合を償却率、算出した経費として計上する額を減価償却費と呼びます。
賃貸マンション経営では、一般的に新築時は借り手が見つかりやすく、年数が経過すると借り手が見つかりづらく、採算が取りにくくなります。
初期に行なった大きな出費が数年に渡って分割されることで、後々収支の苦しい時期にも経費へ計上でき、課税額を抑えられるのです。
耐用年数
法定耐用年数は物品ごとに設定されていて、鉄筋コンクリート造の新築マンションならば建物が47年、建物設備は15年と定められています。
中古の場合は以下の計算式で耐用年数を新たに算出します。
[建物本体47年or建物設備15年]−(経過年数×0.8)=残存耐用年数
減価償却費の計算
償却費の計算方法には定額法と定率法がありますが、建物や建物付属設備・構築物については定率法による減価償却ができないため、マンション経営の場合は定額法を利用することになります。
定額法の場合、以下の式で計算されます。
償却費= 取得価額×定額法の償却率
償却率は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に記載されていますが、定額法の場合は100÷耐用年数でも概算することができます。
減価償却費の例外等
物品を年の途中に購入した場合は、上の式で出た償却費を12で割り、使用していた月数を乗じた額がその年の金額になります。
例えば20万円のパソコンを7月に購入し、すぐに使い始めた場合を考えてみましょう。パソコンの耐用年数は4年、償却率は25%と法律で定められています。
このため、毎年の償却費は20万円×0.25=5万円となります。最初の年と最後の年は6ヶ月しか使わないことになるため、5万円÷12×6=2.5万円、2・3・4年目は5万円ずつ経費で落とす、ということになります。
10万円以上の物品は減価償却資産として扱われますが、10万円以上20万円未満の物品については、3年間に金額を均等に分配して計上する「一括償却資産」という扱いにすることもできます。
マンション経営の勉強のための費用
マンション経営を始めるにあたってセミナーを受講した場合の参加費、経営に必要な情報収集をするために購入した新聞や不動産関連の書籍代、コンサルタント料なども経費へ計上することができます。
ただし、資格取得のための費用は基本的に個人に属する支出とみなされ、たとえ不動産関連の資格でも計上することができません。
入居付けの費用
「入居付け」とは、入居者を迎えるためにする広報などの活動を指します。これにかかる広告費、仲介手数料、消耗品費、仲介業者とやりとりするための交通費・宿泊費などは経費へ計上できます。
マンション経営のために通話やメールなどを行なった際の通信費も経費へ計上することができますが、専用ではなく私用にも使っている端末であれば、全体のうち20%程度までとするのが妥当でしょう。
接待・交際費
管理会社、不動産会社や税理士など、マンション経営に必要な相手と打ち合わせをするために使った飲食代や手土産代なども、経費へ含めることができます。
ローン関連費用
購入したマンションをローン返済する際、元本部分は経費に計上することはできません。しかし、ローンの保証料と利息部分については計上することができます。
マンション経営にはどのような税金がかかるの?控除は?
マンション経営を行う際は、様々な種類の税金を支払う必要がありますが、種類に応じて様々な控除も用意されています。ここからは、マンション経営を継続しているとどのような税金を支払うことになり、どのような場合に控除が適用されるのかを見ていきます。
所得税
サラリーマンとして働く場合と同様、マンション経営で得た所得には所得税がかかります。先に述べた通り、この所得とは収入全体から経費を差し引いた額を指し、この額面に応じて通常通りの累進課税が適用されます。
住民税
一般的に住民税と呼ばれているのは、都道府県民税と市町村民税を合わせたものです。この二つは市町村が一括して徴収していて、所得に応じた額を課税する所得割と、すべての住民に等しく課税される均等割の二つの部分があります。
所得割部分では税率は全国一律で、都道府県民税として所得の4%、市町村民税として所得の6%、合わせて10%が徴収されます。均等割部分はすべての住民に対して同じ額が課税されます。標準税率として、都道府県民税で1,000円、市町村民税で3,000円と定められていますが、均等割の標準税率は自治体ごとに財政に応じて変更できるため、地域によって異なる場合があります。
サラリーマンが副業としてマンション経営を行なっている場合、サラリーマンとしての給与とマンション経営の収益を合わせた所得で所得割部分が徴収されることになります。
所得控除
所得控除は経費とほぼ同じ扱いで、所得控除の分の額は非課税となります。所得控除の種類としては、一律に38万円が控除される基礎控除の他に、医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除など全部で14種類があります。
サラリーマンとして働いている場合は、そちらの所得で既に適用されていますが、もし定年などでサラリーマンを辞めてマンション経営のみになった場合には自分で確定申告をする際に不動産経営の収益から控除することになります。なお、確定申告に伴い、高度な会計処理を行うことで青色申告特別控除を利用することもできます。
関連記事:不動産投資の確定申告の記入方法・必要書類をまとめて解説
固定資産税
固定資産であるマンションとその持分の土地の課税標準額に税率をかけた額が、固定資産税として徴収されます。1月1日に所有している資産については、その年の4月1日〜翌年の3月31日の1年間分が請求されます。年の途中に取引した場合は売主と買主でそれぞれ日数分を負担することになります。標準税率は1.4%と定められており、多くの自治体はこれを適用しています。
なお、住宅用地には控除が用意されており、住宅一戸につき200㎡までの部分の課税標準額は6分の1、それ以外の部分については3分の1とされています。建物部分についても、同様に評価額の1.4%が課されますが、もし土地だけを持っているようであれば、建物を建て、控除が適用されるようにした方が課税標準額を抑えられることになります。
都市計画税
固定資産に対しては、固定資産税に加え、都市計画税も同様の方式で徴収されます。こちらは制限税率(税率の上限)が0.3%と定められていますが、これより税率の低い自治体もあります。こちらも住宅用地への減免措置があり、住宅一戸につき200㎡までの部分の課税標準額は3分の1、それ以外の部分については3分の2とされます。
個人事業税
個人事業税は、個人が行う事業に対して地方がかける税金です。マンション経営の場合、法定業種である「不動産貸付業」に該当しますが、事業として認定されるのは概ね10室以上を貸し付けている場合となります。不動産貸付業の事業主として認定された場合、税額は以下の式のようになります。
個人事業税=(前年度の所得- 各種控除)× 税率
年間を通じて行なっている場合、290万円が控除されます。また、この税金は経費へ含めることができます。
損益通算とは?
マンション経営では、減価償却費などの経費が高く計上されることによって、税務上赤字になることが起こり得ます。その場合、赤字になった分の額は他の所得から差し引かれることになっており、これを損益通算と呼びます。
つまり、サラリーマンが副業としてマンション経営を行なっている場合、マンション経営で出た赤字はサラリーマンの給与所得から差し引かれることになります。マンション経営が赤字になってしまったとしても、所得が少なくなった分、所得税を抑えて赤字の負担を軽減することができます。
ただし、マンション経営単体で見た場合、健全な経営状態ではなく、節税効果とのバランスを見なければ破綻の恐れもあります。節税が目的になってしまえば、不動産投資それ自体はなんの利益も生み出しません。あくまでマンション経営それ自体の利益を増やすことを意識するようにしましょう。
まとめ
今回は、マンション経営をするに当たり不可欠な収支に関する知識や、経費への計上の方法、税金と控除について解説してきました。収支には様々な要素が関わっているため、事前に収支の予測を立てて投資を実行するには多くの計算が必要になります。それでも、マンション経営を成功させるためにも、最初の物件選びから経営開始後の経費の計算まで、丁寧に計画を練って進めることを強くお勧めします。
関連記事:プロが教えるリスク対策!儲かるアパート・マンション経営のコツ
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