アスベストの危険性と調査・解決方法を解説!不動産購入前の確認ポイント

アスベストの危険性と調査・解決方法を解説!不動産購入前の確認ポイント

アスベストが社会問題となって数十年が経過しますが、現在でもアスベスト問題が完全に解決したわけではありません。不動産経営を行っていく上でもアスベスト対策は必須です。
今回はアスベストの危険性やアスベストの有無を調査する方法、除去方法などについて解説していきます。

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アスベストって?危険性は?

まず、アスベストの物質的な特性をみていきましょう。

アスベストとは?

アスベストは別名を石綿とも呼ばれ、天然に産出する繊維状ケイ酸塩鉱物の総称です。アスベストは、熱や摩擦に強く、酸性やアルカリ性といった科学的負荷にも耐えられます。このように丈夫で変化しにくい特性を持っていることから、様々な製品に使用されてきました。

アスベストの種類

アスベストには、蛇紋石系の1種類と、角閃石系の5種類の、計6種類があります。
蛇紋石系のアスベストは、クリソタイル(白石綿)といいます。
角閃石系は、クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトの5種類となります。

産業界、工業界で使われたのは、圧倒的にクリソタイルが多く、次いでクロシドライトとアモサイトとなっており、この3種類の有害性の強さは、クロシドライトアモサイトクリソタイルとなっています。

身近なアスベスト製品

経済産業省が2005年に調査したところ、家庭用の744製品にアスベストが使われていました。

それらのうち、普段使用する中でアスベストによる人体への影響が考えられうるものは、火鉢とともに販売していた灰のみであり、その製品は1960年代までに製造を終了しています。

ほかの製品においても、製品のごく一部分にアスベストが使われているものがほとんどでした。また、現在ではアスベストを含む製品は製造や使用が禁止されています。古いものを使用していて気になる方は、メーカー等に直接問い合わせることをお勧めします。

アスベストの空気中への飛散

不動産関連では、かつて建材にアスベストが使われていました。アスベストを使用して作られた建材が時間の経過とともに様々なダメージを受けると、強度の低下が起きます。

そして何らかの圧力で建材が損傷した際に、そこに含まれるアスベストが露出したり、粉塵となって飛散したりするリスクがあります。また建物の解体や改修工事においても、同様に空気中への飛散が起きます。

アスベストによる疾患

アスベストによる人体への影響は、空気中に漂うアスベスト繊維を吸引し、肺の組織にダメージを受けることで引き起こされます。具体的な疾患としては、肺がんや石綿肺などが知られています。

アスベストによる疾患の多くは、潜伏期間が長いという特徴を持ちます。石綿肺で数年から20年ほど、また肺がんでは20年から30年以上もの潜伏期間を経て発症します。

そのため、自分がアスベストを吸っていることに気が付かず、30年もの長い時間が経って疾患が発症し、そのときに初めて気が付くといったことが起きるのです。

アスベスト使用の可能性のある建物は?

続いて、アスベストと建物の関係をみていきます。

アスベストが使用されている場所

アスベストを含む建材は、住宅では外壁、屋根、屋根裏等に成形板として使用されています。ビルでは梁、耐火被覆、吸音用の吹き付け材などに使用されています。

詳しくは、以下の4項目となります。この4項目には注意しましょう。

  1. 鉄骨の耐火被覆材、機械室等の吸音・断熱材、屋根裏側や内壁などの結露防止材としての吹付け材
  2. 鉄骨の柱、梁等の耐火被覆成形板
  3. 天井等の吸音・断熱及び煙突の断熱としての断熱材
  4. 天井・壁・床の下地、化粧用内装材、天井板、外装材、屋根材等の成形板

この中で最も注意したいは吹付け材です。吹付け材は、屋根裏など普段では見えにくいところに使われていることが多いからです。内装の仕上げ材の下に吹付け材が存在する可能性もあります。

見た目だけではアスベストが含まれているかどうか分かりません。アスベストは、生活空間と隔離された場所にあるイメージを持っている人もいますが、配線や空調の通路のように空気の流通があるところに存在すれば、生活空間に届いてしまうかもしれません。

アスベストが使用されている建物

労働安全衛生施行令などが2006年に改正され、アスベストを0.1%超含む製品の製造、輸入、使用が禁止されました。

したがって現在は、日本では新規にアスベストが使われることはありません。しかし2006年以前に建築された建物であれば、アスベストが使用されている可能性があります。詳しく確認したいという場合は、建築業者等に問い合わせる必要があります。
「2006年」以外にも、アスベストと建物に関係した重要な年月があるのでご紹介します。

<1975年>
特定化学物質等障害予防規則が1975年に改正され、アスベストの含有割合が5%を超える吹き付け材を使った作業が禁止されました。
そのため、1975年以前に建てられた建物には、「多くのアスベスト」が含まれている可能性があります。
また、規制値の5%超は、現在の規制値の0.1%超と比べると、「かなり緩い」値です。そのため1975年以降に建てられた建物にも、「少なくない量のアスベスト」が含まれている可能性を否定できません。

<1987年>
1987年に、建物の耐火構造の指定から、アスベストを使用した構造が除外されました。
この前年の1986年に、国連労働機関(ILO)が「石綿の使用における安全に関する条約」(以下、石綿条約)を発効しました。日本政府が規制強化に動いたのは、世界的な流れを受けてのこと、といえます。ただ、日本が石綿条約を批准するのは2005年です。

<1995年>
労働安全衛生法施行令が1995年に改正され、アスベストを1%超含む吹き付け材が禁止されました。

また同年に、クロシドライトとアモサイトの製造、輸入、使用が禁止されました。さらに、耐火建築物で吹き付けアスベストを除去するとき、事前に行政機関に届け出なければならなくなりました。

<1997年>
大気汚染防止法が1997年に改正され、吹き付けアスベストを使用している建物を解体する工事が「特定粉じん排出作業」に認定されました。これにより、建物を解体するときは行政機関に事前に届け出をして、作業基準に沿った工事をしなければならなくなりました。

<2004年>
2004年に、アスベストが1%超含まれる建材、摩擦材、接着剤など10品目の製造、輸入、使用が禁止されました。

<2005年>
石綿障害予防規則が2005年に改正され、アスベストが使われている建物を解体したり、改修したりするときは、「届け出」「特別教育」「石綿作業主任者の配置」が必要になりました。

不動産を買う前にアスベストの有無を確認しましょう

ここまでアスベストについてご紹介してきましたが、住宅やビルなどの中古物件を買おうとしている人は、取引対象となる建物のアスベスト使用の有無が気になるはずです。では、どのように確認すればよいのでしょうか?

重要事項説明書で確認する

建物の重要事項説明書には、アスベスト使用調査を行ったか否かを記載しなければなりません。また、宅地建物取引業法により、アスベスト使用調査を行っている場合は、宅地建物取引業者(以下、不動産会社)は、取引相手に対し、調査内容を書面で説明しなければなりません(第35条1項14号)。この「説明義務」は、建物の売買だけでなく、交換や賃借したときも課せられます。

したがって、取引対象の建物にアスベストが使われていて、アスベスト使用調査が行われているときは、「アスベストが使われていること」が確実にわかる仕組みになっています。

しかし、不動産会社には、「アスベスト使用調査の実施」が義務づけられていません。また、重要事項説明書に「アスベスト使用調査は行なっていない」と記載されていれば、アスベストが使われているのかどうかはわかりません。

つまり、重要事項説明書に「アスベスト使用調査は行なっていない」と記載されている場合は、買主が自分で調査を行わければなりません。

その方法を次の章で紹介します。

アスベストの調査方法は?

アスベストの調査には、設計図書の確認と現地調査が必要です。まず設計図書は、建物を建築した建築業者やその建物を販売した宅建業者に問い合わせることで、確認することができます。

ただし、設計図書にアスベストを使用した旨の記載がない場合や、その後の工事などで使用した場合は、設計図書からアスベストの使用の有無を確認することができないので、実際に見て確認する現地調査も重要です。

アスベストが使用されているのかどうかを個人で判断するのは難しいので、専門家に依頼しましょう。

  • 具体的な手順

相談
アスベストを含む建材が使われているかどうかを調査したいと思ったら、建築設計事務所、設備業者、工務店、調査会社、地方公共団体等に問い合わせます。そのうえで、専門的な講習を受け、公的資格を与えられたアスベスト調査の専門家に依頼します。

調査
調査は依頼した専門家が行います。専門家はまず図面に基づいた調査を行いますので、事前に建築業者に問い合わせて図面等を入手しておきましょう。その後、現地調査を行います。建材のサンプリングを行い、アスベストの含有率を分析します。

調査後
以上の調査の結果が出ると、調査者は調査票を作成し、依頼者に渡します。その際に、調査結果及び今後に行うべき管理等の説明がなされます。調査票は改修や解体を行うときに必要となるので、保管しておきましょう。

一般の人でもできるアスベストの見つけ方

アスベストを使っているかどうかの確認は、専門家に依頼したほうがよいのですが、一般の人でも「アスベストがある」ことは、ある程度確認することができます。

ここでは3つの方法を紹介します。

  • 方法その1:メーカーに問い合わせる

まずは、アスベストの使用頻度が高い、屋根材、外壁材を調べてみましょう。屋根材の場合、「セメント瓦」はアスベストが使われている可能性があります。外壁材では「サイディングボード」が疑わしいでしょう。

屋根材や外壁材の製品名や品番がわかったら、メーカーに問い合わせることで、アスベストの有無が判明します。またメーカーのなかには、ホームページで、過去の製品のアスベスト使用状況を公開していることがあります。

  • 方法その2:建材の一部を切り取って調査機関に調べてもらう

古い建物の場合、建材の製品名や品番がわからないことがあります。それではメーカーに問い合わせることができません。
その場合は、建材の一部を切り取って、成分分析ができる調査機関に調べてもらうことで、アスベストの有無がわかります。

  • 方法その3:国土交通省の「目で見るアスベスト建材」を調べる

まったくの「建築素人」では難しいかもしれませんが、DIYなどで建物を建てた経験があったり、趣味で建築の勉強をしている人なら、国土交通省が公開している「目で見るアスベスト建材」が参考になります。

参考URL:【国土交通省】目で見るアスベスト建材(第2版)

「目で見るアスベスト建材」は、1)吹き付け材、2)保温材・耐火被覆材・断熱材、3)内装材(壁と天井)・耐火間仕切り・床材・外装材(外壁と軒天)、のチェックポイントを示しています。

イラストや写真を多用しているので、わかりやすい内容になっています。

ただ、専門用語も多いので、建築の基礎知識がないと正確には読み解けないかもしれませんので注意が必要です。

  • 注意:「ある」ことはわかっても「ない」ことは確実にはわからない

以上の内容は、「アスベストがある」ことの確認方法です。そのため、一般の人が上記の方法で調べて、アスベストが見つからなかったからといって、そのことだけで「アスベストがないから安全」とは言い切れません。
一般の人ではアスベストを見落としてしまったり気づけない場合もあり、専門家なら見つけ出すかもしれないからです。

アスベストが含まれていることがわかったらどうすればいい?

アスベスト含有吹付け材の場合

建築基準法により、吹付けアスベストとアスベスト含有吹付けロックウールの二つについては、増改築や大規模な修繕を行う際に除去等の対策を取ることが義務付けられています。

アスベスト含有吹付け材は、劣化すると繊維が空気中に飛散してしまう可能性があるからです。

まずは現状を把握しましょう。もし劣化が激しいことが分かった場合、人体に影響を及ぼす可能性が高いので、除去や封じ込め等の対処を直ちに行う必要があります(詳しくは後述します)。

また劣化が激しくない場合でも、いつかは劣化してしまうので、できるだけ早く対処を行う必要があります。

成形板に含まれている場合

成形板にアスベストが含まれている場合は、改修や解体を行わない限り、必ずしも対策を講じる必要はありません。

例えば、屋根などに使用されている成型板の中にはアスベストを含んでいるものもありますが、通常の生活においては健康への害がないとされるため、除去等を行う法的義務がないのです。

ただし、成形板に穴を開けたり、傷つけたりといった作業を行う場合には、それが軽微な作業であってもアスベストが飛散する危険性があります。その為、飛散を防止したり、発生する廃棄物の適正な処理を行ったりと、措置を講じてください。

また、アスベストを含んでいるかどうかをあらかじめ理解し、もし含んでいるものがあるならば、法的義務の有無に関わらず、自分や第三者に被害をもたらさないよう適切な処置を取るようにしてください。

アスベストの対策方法

アスベスト含有吹付け材への対処方法としては、除去、封じ込め、囲い込みの三つがあります。どれを選択するかは、個別のケースごとに専門家の判断が必要です。

除去
アスベスト含有吹付け材を完全に取り除く方法であり、アスベストによる健康被害への懸念はなくなります。

封じ込め
アスベスト含有吹付け材の表層に、化学物質を散布して被覆・固定化することで、アスベストが劣化しても繊維が空気中に漂わないようにする方法です。将来改修などを行う際には、改めて除去工事が必要です。

囲い込み
アスベスト含有吹付け材の表層を板状の材料で覆う方法です。工事の際にはアスベスト含有吹付け材に触れてはいけないこと、間接的な衝撃も与えてはいけないことなど、注意が必要です。

資産価値

アスベスト含有建材が使用されていることが分かった場合、その不動産の資産価値はアスベスト除去費用分だけ減少します。アスベスト含有建材の有無が不明の場合は買い手側が調査を行うことが一般的ですし、その過程でアスベストが見つかれば減額交渉が行われます。

減額が大きくなることもあり、取引に大きく影響します。それゆえ、不動産の所有者はできるだけ早くにアスベストの有無を確認することをお勧めします。

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調査や除去の費用と補助金

(1)除去費用
除去費用は一概に言えませんので、業者に相談する必要があります。目安としては以下の表のようになっていますが、あくまで目安であり、特に処理面積が低くなればなるほど除去費用のばらつきが大きくなってしまうことに注意してください。

アスベスト処理面積 除去費用
300 m2以下 2.0万円~8.5万円/m2
300 m2~1,000 m2 1.5万円~4.5万円/m2
1,000 m2 1.0万円~3.0万円/m2

(2)調査に対する補助金制度
建物のアスベスト調査をする場合、国が費用の一部を補助してくれます。補助金の額は1軒につき25万円です。
補助金が出る条件は、建築物の所有者が、吹き付けアスベストなどが施工されている恐れがある建築物に対し、専門業者に「アスベスト含有の有無にかかわる調査」を依頼したときです。
吹き付けアスベストの他に、アスベスト含有吹付けロックウール、吹付けバーミキュライト、吹付けパーライトも対象になります。

補助金を受けるには、調査を行う前にお住いの地方公共団体に相談をする必要があります。(補助金制度は国のものですが、手続きは地方公共団体が行います。)
相談した結果、補助金の対象になることがわかれば、建築物の所有者が地方公共団体に「補助金交付申請」を行ないます。申請が受理され、補助金の交付が決定してから、アスベスト調査を業者に依頼します。
調査会社による調査が終了したら、所有者が地方公共団体に調査完了報告書を提出し、それが受理されたら補助金が交付されるという流れになります。

(3)除去工事に対する補助金制度
アスベストの除去、封じ込め、囲い込みといった対処に関しても、国または地方公共団体によって補助金が支給されます。ただし、行う工事の対象は、吹き付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウールのみとなっているので注意が必要です。

こちらにもやはり限度額がありますので、詳しくは地方公共団体に問い合わせることが必要となります。
参照:【国土交通省】アスベスト対策Q&A

まとめ

以上、アスベストの性質や健康被害、対策方法などについて見てきました。

アスベストは、現在では完全に規制されているため、これから新たに建てる建物には使用されないので問題ありません。しかし古い建物を扱う場合には、依然として注意が必要です。

除去などの法的義務を遵守することは当然として、オーナーであるご自身、入居者、工事業者に健康被害を与えないように注意する必要があります。

またアスベストを含む廃棄物の処理方法に関する規制など、関連する法律も多くあります。さらに、売買の際には資産価値にも影響します。

そのため基本的な事項を理解したうえで、不明点がある場合は地方公共団体と専門家に相談し、早めに解決しておくことをお勧めします。


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