【 目次 】
不動産投資において重要となるものに、その不動産から将来的に得られる利益を算出する「収益価格」があり、その「収益価格」に大きく影響を与える要素に「割引率」があります。
しかし、この「割引率」を正確に理解している人は少ないのではないしょうか。
そこで、今回はその「割引率」について解説します。
不動産投資セミナーに興味がある方は、下記内容もご覧ください。
割引率とはなにか?
不動産投資において重要となるのが不動産価格です。
この不動産価格には、一般的に「積算価格」と「収益価格」の2種類が存在します。
この2つを簡単に解説しますと、積算価格は「現在と同じ土地を購入し、同じ建物を建てた場合、どのくらいかかるのか(再調達原価)」を表す価格であり、主に金融機関がお金を貸す際に、担保として預かる物件の価値を見極める価格になっています。
一方で、収益価格は「現在建物から得られる家賃収入等から計算した場合、どのくらい儲かるのか」を表す価格になっています。
そこで、この収益価格は賃貸用建物やテナントビルなどを購入する際に多く用いられます。
関連記事:その物件、正しく評価されてる?積算価格と収益価格について解説
この背景から、不動産投資においては主に収益価格が用いられます。
そして、収益価格を算出する上で重要な要素となるのが、「割引率」という概念です。
これは、「将来受け取ることのできる、ある金額を現在受け取ろうとした場合にどの程度割り引くのかを決める係数」です。
つまり、利回りなどを考慮した場合に現在の貨幣価値と将来の貨幣価値は異なるので、将来受け取ることのできる金額を現在受け取った場合にいくらになるのかをこの割引率によって計算することになります。
例えば利回りを3%とすると、現在の100万円は1年後には100万円×1.03=103万円になります。
では1年後の100万円は現在いくらになるのかを考えると、100万円÷1.03=約97万874円となります。
このような計算を行う際、現在価値から将来価値を計算する際に乗じた3%のことを収益率と呼び、将来価値から現在価値を計算する際に割り引いた3%のことを割引率と呼びます。
不動産における割引率の意味合いとは?
収益価格を求める方法には、一期間の純収益を還元利回りによって還元する直接還元法と、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値を割り引き、それぞれを合計するDiscounted Cash Flow 法(DCF法)があります。
割引率はこのうちDCF法で収益価格を算出する過程で用いられ、仮に毎年100万円の収益をあげる不動産の割引率が6%であるとすると、現在価格と割引額の関係は下のグラフの様になります。
また、簡便性などから一般的に用いられる場合が多いのは直接還元法ですが、金融機関など収益価格の算出に正確性が要求される場合には、割引率など多くの項目を算出に用いるDCF法が多く取られています。
したがって、不動産価値の正確な額を計算する場合には、割引率が重要になってくるでしょう。
割引率と還元利回りの違い
還元利回りとの違いについて解説します。
不動産に関する記事では、「本質的には同じものである」と記述しているものも存在しますが、実際はどうなのでしょうか。
国土交通省発行の資料では、
還元利回り及び割引率は、共に不動産の収益性を表し、収益価格を求めるために用いるものであるが、基本的には次のような違いがある。 還元利回りは、直接還元法の収益価格及びDCF法の復帰価格の算定において、一期間の純収益から対象不動産の価格を直接求める際に使用される率であり、将来の収益に影響を与える要因の変動予測と予測に伴う不確実性を含むものである。 割引率は、DCF法において、ある将来時点の収益を現在時点の価値に割り戻す際に使用される率であり、還元利回りに含まれる変動予測と予測に伴う不確実性のうち、収益見通しにおいて考慮された連続する複数の期間に発生する純収益や復帰価格の変動予測に係るものを除くものである。
(国土交通省発行 不動産鑑定評価基準)
とされています。
「還元利回りと割引率は似ているけれど少し違うものである。」ということが書いてあるということは理解できますが、どこがどう違うのかは非常に分かりづらいと思います。
ここに書いてあることを簡単に言うと、還元利回りは、将来的な純収益や復帰価格(保有期間満了時の将来的な不動産の売却価格)の変動という不確実性(リスク)を加味した上で決定されるものですが、割引率はそのような不確実なものを取り除いて決定されているものである、ということです。
このとき、割引率は全く確実なものではなく、キャッシュフローの不確実性を含んでいることには注意が必要です。
割引率の求め方
割引率の求め方を確認していきます。
割引率を求める方法を例示すると次のとおりである。
(ア)類似の不動産の取引事例との比較から求める方法
対象不動産と類似の不動産の取引事例から求められる割引率をもとに、取引時点及び取引事情並びに地域要因及び個別的要因の 違いに応じた補正を行うことにより求めるもの。(イ)借入金と自己資金に係る割引率から求める方法
対象不動産の取得の際の資金調達上の構成要素(借入金及び自己資金)に係る各割引率を各々の構成割合により加重平均して求めるものである。(ウ)金融資産の利回りに不動産の個別性を加味して求める方法
債券等の金融資産の利回りをもとに、対象不動産の投資対象としての危険性、非流動性、管理の困難性、資産としての安全性等の個別性を加味することにより求めるものである。(国土交通省発行 不動産鑑定評価基準)
(ア)類似の不動産の取引事例との比較を行う場合は、近隣地域や同様の構造・築年数など、不動産の性質が類似している取引事例を参考にしつつ、割引率を決定するものです。
(イ)借入金と自己資金に係る割引率から求める場合は、自己資金と借入額に掛かる割引率を加重平均することで、不動産の割引率 を算出する方法です。
例えば、自己資金10%、借入90%で不動産を取得しており、自己資金の割引率が10%で借入金の割引率が5%であったとします。
この場合、不動産の割引率は5.5%となります。
(ウ)金融資産の利回りに不動産の個別性を加味して求める場合は、不動産を一種の金融資産として考える事になります。この場合には、金融資産の実態に関しても正確に理解しておく必要があります。
割引率の注意点
最後に割引率を考える際に注意しなくてはいけないことを整理します。
還元利回り及び割引率を求める際の留意点
還元利回り及び割引率は、共に比較可能な他の資産の収益性や金融市場における運用利回りと密接な関連があるので、その動向に留意しなければならない。さらに、還元利回り及び割引率は、地方別、用途的地域別、品等別等によって異なる傾向を持つため、対象不動産に係る地域要因及び個別的要因の分析を踏まえつつ適切に求めることが必要である。
(国土交通省発行 不動産鑑定評価基準)
とあり、今回の記事内で見てきたように還元利回りや割引率には市場の動向や同様の地域・形態の不動産の動向にも大きく影響を受けるものです。
不動産投資などで割引率を検討する必要がある場合には、その決定に関わる要因に関して幅広く情報収集を行い多角的に検討する必要があるでしょう。
まとめ
割引率はその実態が把握しづらく計算内での使用の方法も複雑であるが故に、今まで理解が広まっていたとは言えませんが、不動産投資を行う際には物件の価値を正確に計算・把握する上で懸案すべき要素の一つです。
ただし、割引率を用いずとも、周辺相場から賃料を割り出し、そこから利回りを考慮して売買価格等を決定する、といった不動産価格の決定方法もあるということもあわせて覚えておくとよいでしょう。
不動産投資などで割引率を検討する際には、今回の記事を参考にして頂ければ幸いです。
また、下記の記事では人それぞれの実例を挙げておりますのでご確認ください。
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